新型コロナウイルスの流行とともに急速に浸透した大学のオンライン授業。しかし、多くの学生からは「授業が身になっている気がしない」「施設利用や教員・学生との交流の機会が奪われている」といった不満が続出した。
一方で、東大生の7割はオンライン授業に賛成しているという調査結果も発表されている。なぜ東大生はオンライン授業を肯定的に評価しているのだろうか。ここでは『オンライン授業で大学が変わる コロナ禍で生まれた「教育」インフレーション』(大空出版)を引用。授業環境の変化に苦心する大学生が数多く存在する一方、大半の東大生がオンライン授業に満足している理由を紹介する。
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大学生による、大学生の視点に立ったオンライン授業の評価の試みを紹介しよう。東京大学の現役学生が執筆、編集、配信するオンラインメディア「東大UmeeT(ユーミート)」が行った、東大生を対象にした意識調査である。
「(UmeeTの)編集部内で話していて、オンライン授業という初の試みに対する学生の反応はどうなのか、その情報は東大の先生たちも欲しているし、他大の学生も気になっているだろうと。(ニュースとして)需要があるはずだということで調査をはじめました。何より自分自身が興味があり、知りたいと思ったことがきっかけです」
UmeeT編集部でライターを務める武居悠菜さん(教養学部2年=20年度時点)は振り返る。
一早くオンライン授業に舵を切った東京大学
ほとんどの大学が20年度の前期授業の開始を遅らせる措置を取る中で、東大は3月下旬に学事歴(年間スケジュール)を変えない方針を表明、4月上旬から早々とオンラインによる新学期を開始した。武居さんが調査を行ったのは4月下旬と、これも素早い反応である。5月3日にネット上にアップされた記事「実際どうなの? 東大生にオンライン授業の感想を聞いてみた」は、そのタイムリーさもあって大きな注目を集めた。国立情報学研究所(NII)が5月29日にオンライン開催した、第9回「4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム」(第24回から「大学等におけるオンライン教育とデジタル変革に関するサイバーシンポジウム『教育機関DXシンポ』」に改称)に武居さんがパネリストとして招かれ、「学生から見たオンライン授業」と題して調査結果を発表する機会を得たほどだ。
ちなみにこのシンポジウムは、全国の大学などによるオンライン授業の取り組み事例を広く紹介し、互いに学び合うことを目的として、3月26日の第1回開催以降、精力的に開かれている。さまざまな角度のテーマについて、各大学でキーマンに当たる人たちが報告を行う。試行錯誤が続けられているオンライン授業の“現在進行形”を概観するのにお勧めだ。
さて、オンライン授業に対する東大生の反応について見ていこう。調査は同編集部のフェイスブックとツイッターを通じたアンケート形式で行われ、70人から回答を得た。
まずは「オンライン授業に満足していますか」という問いへの回答だ。「満足」と「ある程度満足」を合わせると約75%、つまり4分の3の学生がオンライン授業を支持している。評価する具体的な理由として、記事中で紹介された主な意見を以下に挙げてみよう(漢字表記や語句の用法など、言い回しを若干、原文と変えています)。