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 そのせいもある。残念なことに、誰が出演者で何の曲を歌っていたのかなどの記憶は“おぼろ”なのである。

 今となって考えれば、なんだかだやはり自分の仕事のことでアタマがいっぱいだったというのもあったのだろうが……。そうしたぼんやりとした思い出のなかにも、本当に今も唯一忘れられないのが、ジャニーさんの姿なのである。

テンプテーションズのカバー曲で「ジャニーズ案外分かってんじゃん!」

 私は舞台正面下手客席にあたる場所に控え、稽古を眺めていた。その斜め前あたりに、小柄ではあるが均整のとれた体躯の男が、姿勢良く腕組みをしながら、進行するリハーサルを凝視しているのが目に入った。と、男は突然パンパンパンと手を三つ鳴らしツカツカと舞台中央に歩み寄り、一言二言演者に注文をつけると、また何事もなかったかのように先程の場所に戻り先程のように腕を組むのだが、その一連の所作のなんとも印象深く、一体何者なのだろうと、現場にいた知り合いのナベプロのマネージャーに、あの人だーれ? と尋ねると、「馬鹿、オマエしらないのか??」と呆れられてしまったものである。

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 あの頃は今と違って、そんな業界の人の顔や名前なんて、普通は知りませんよ(笑)。

 それはともかくとして“洋楽命”だった俺がジャニーズにはさほど興味や知識のなかったのも事実である。

 最初にジャニーズの音が気になったのは、オリジナル曲ではなくザ・テンプテーションズの『Happy People』のカバーだった。それこそウエスタンカーニバルなどの大団円ではお馴染みの“群舞ナンバー”となっていた楽曲だが、その“ディスコ感”が、当時の日本の歌謡音楽シーンでは大変に新鮮だった。この選曲に、生意気にも、ジャニーズ案外分かってんじゃん!と思ったものである。

本領発揮は、やはりフォーリーブス以降

 ところで、今回編集から頂戴したテーマとは、大雑把にいってしまえば、ジャニーさんを偲んでジャニーズベストを選べ! みたいなことであったので、私も色々と考えた。そもそもジャニーさんの作品とは楽曲ではない。人(含むグループ)だろう。その認識を持つところから始めないといけない。

 先ずは原点ともなったグループ、ジャニーズであるが、今でこそ事務所関連楽曲を俯瞰した時に認められる一連の“らしさ”は、この段階では——ディスコグラフィーを紐解いてみても——まだそこまではハッキリとしたものにはなっていなかった(萌芽は感じられるにせよ)ようにも思える。ジャニー喜多川のプロデュースに於ける本領発揮は、やはりフォーリーブス以降なのかも知れない。

フォーリーブス「THE VERY BEST OF FOUR LEAVES」

 とはいえ、フォーリーブスの音楽のなかにもジャニーズ時代からの伝統/DNAを感じ取ることはできる。