段ボール11箱分の資料を押収、すべてを読み込んだ
また、第三者委員会は、学校や市教委が保管しているすべての資料を入手しなければなりません。大津の時では、被害生徒が通っていた学校が、同級生らに実施したイジメのアンケートを不開示にしていました。僕らが学校や市教委に働きかけても、なかなか資料が出でこなかったんですけど、幸運だったのは警察が動いてくれたことでした。職員室を家宅捜索して、すべての資料を押収し、僕らに渡してくれたのです。
重要な資料から学級日誌まで全部で段ボール11箱分もあり、あれだけの資料を読むのは大変でしたが、その分、当時学校内で何が起きていたのか、学級はどう変化していったのか等を克明に見ていくことができました。
旭川の場合でも、2019年にY中学校が実施した加害者生徒や同級生、教員らの聞き取りをまとめた調書について、遺族が情報公開請求をしても、教育委員会が開示拒否を行っていると聞きますが、事実なら第三者委員会は、まずあらゆる資料を集め、当時実際に何が起きていたかを虚心坦懐に見直すべきでしょう。
すごく寒くて、ブルブル震えながら聞き取りをした
イジメに関係した生徒や学校関係者への聞き取り調査も大変重要になります。大切なのは、杓子定規に関係者と対峙することではなく、臨機応変に、相手の立場に立って話を聞こうとする姿勢です。大津の時は、基本的にイジメに関係した子どもや先生には、市教委の会議室に来ていただくというかたちを取りました。しかし、中には『教育委員会には行きにくい』という子もいるわけですね。そういった場合は、相手が指定するところへ足を運ぶ約束にしていました。
ある時は、山の上の方に住む生徒のご自宅に伺ったこともありました。すごく寒くて、ブルブル震えながら聞き取りをした記憶があります。また、生徒の自宅で聞き取りをするというケースもありました。そうやって、調査委員会のメンバーが誠意を見せれば、子どもたちも次第に心を開いて「本当のこと」を話してくれる。そんな場面がいくつもありました。聞き取りに応じることは、加害側の子どもにとっても、自分のとった言動を見つめ考える重要な教育機会でもあるのです。
加害生徒の親からすごい迫力で恫喝されたこともあった
ただ、僕はこれまで多くのイジメ問題の解決に取り組んできましたが、最近では加害者側の親も加害生徒と同じトーンで反論してくるケースが多くなってきているように感じます。「うちの子はイジメはしていない。あれはただの悪ふざけだった。だから、うちの子どもが聞き取り調査を受ける必要はない」といった具合です。この場合は、まず親に、関係者にはイジメを行ったかどうかにかかわらず、聞き取りをしていることを十分に納得してもらったうえで、子どもにも話を聞くことになります。正直労力は通常の聞き取りの何倍にもなるので、大変です。時には、加害生徒の親からすごい迫力で恫喝されることもありました。なかなか一筋縄ではいかないことも多いのです。