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「形」の採点基準とは

 一方で「形」の勝敗の基準は難解で、どのように観戦すればよいのかわからない方も多いだろう。

 競技経験がなければ、演武中にどちらの選手が優れているのか判別することは困難。いや、3歳から空手を始め、内閣総理大臣杯全国空手道選手権団体組手優勝、現在も競技を続ける筆者でも、勝敗の判別について頭を抱えることがあるほどだ。
 
 そうした“わかりづらさ”への懸念もあってか、これまでは審判5人による旗判定で過半数を獲得した方が勝者となっていた(その他、形の演武後に採点ボードを集計者に見せていく方式もあった)ジャッジが、2019年1月から審判員7人が点数で評価する採点方式に変更された。

 とはいえ、採点基準に倣いながら、世界空手連盟が定めた102種類の技から構成される「演武内容」の狙いを測ったり、「スピード」「立ち方」「正確な呼吸法」「タイミング」「流れるような動き」「空間の把握」「極め」「技」「バランス」「力強さ」といった評価基準が、どれほど美しく正確に行われているのかを一般視聴者が判断するのが困難なことに変わりはない。

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©iStock.com

 もちろん、体操やフィギュアスケートに代表されるように、審査員の採点によって勝敗が決まるスポーツも五輪では数多く行われている。しかし、空手の「形」は他の競技に比べて、目に見えるミスが起こる可能性が限りなく低いのだ。一つひとつの技の成功を祈るように見守る競技以上に観戦ハードルがあると思われる。

空手で「形」が重視される理由とは

 そうした難しさを孕んでいるのであれば、スポーツとしてわかりやすい「組手」のみを競技に採用すれば良いのではないかと考える方もいるだろう。しかし、今回の東京五輪では「形」も新種目に採用された。これには「空手」ならではの大きな理由があるのだ。