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死の直前にわかった、父の「未練」

――ホッとしました。広告の文章でこれまた気になったのですが、“この世に未練のあるあなたなら、幽霊になって読んでるよな”とあります。お話を伺っていると、そういったイメージをお父様に抱けないのですが。

足澤 5年前くらいに父の大腸がんがわかって、そこから3年後に60歳で亡くなったんです。それで亡くなる1年前に家族会議をして、どうせ借金も返せそうにないので、自己破産したらとか、持っていた田畑と山を売ったらとか提案してみたんです。

 そうしたら、「代々受け継いできた田畑を、俺の代で手放すなんて情けない!」みたいなことを言って泣き出したんですよ。父が泣いたのを初めて見たのと、そんなこと思っていたのかと驚いて。なんか相当悔しいんだな、未練があるんだなと思ったんですよ。

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――その時、みなさんどういう感じでお父様を見ているわけですか。

足澤 ものすごくドライでした。姉たちも僕も妹も冷めた目で(笑)。結局、自己破産しようとしたら亡くなってしまったので、相続放棄という形で田畑と山は手放しました。

 結局、相続放棄しても父が母や姉の名義で作った100万円くらいの借金も判明しました。相続放棄でフラットにできると思ったら、そうはいかなかったという(笑)。まぁ、それも残った家族で出し合って完済しましたが。

 

葬儀代に困って「献体」に…

――手術代、入院費は大変でしたか?

足澤 そこは高額療養費支給制度があったので大丈夫でした。ただ、葬儀代が困ってしまって。

 父が生きている時に、「お金がなにもないから、葬儀もできないけど。どうする?」て話をしたんですよ。なんとか工面する方法はないものかと探したら、献体すれば火葬や葬儀も引き受けてくれることを知って。

――献体って、医大の解剖実習に用いられるやつですよね。

足澤 そうです。「こういうのどう?」「うーん、まぁ、それもありかな」といろいろ考えてくれて、結果そうすることになったと。献体は戻ってくるのに、2〜3年掛かるんですよ。ちゃんと焼いてくれて、骨壷に入れてくれて、それを引き渡してもらう時に医大の学長さんが賞状みたいなのを読み上げて骨と一緒に渡してくれる。

 ほんと、ついこの前、1週間くらい前に引き取りに行ったばかりです。

――そこに未練めいたものはない。

足澤 父って、よく献血をやっていたらしいんですよ。私もよくやるんですけど。どこかで、なにか人の役に立ったと思いたいんですかね。