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同僚たちに勧められて、生い立ちを広告に

――そうしたお父様への想いを込めた「AI-Credit」の広告ですけど、二戸駅と盛岡駅に限定して掲出したのはなぜですか? 二戸は故郷で最寄り駅だからと理解できますが。

足澤 大学が滝沢村(現・滝沢市)という村にあって、僕を筆頭に学生たちがいっぱい住んでいたんです。そこで飲みに行くとなると、IGRいわて銀河鉄道の滝沢駅から盛岡駅まで行って街に繰り出す感じで。その思い出とIGRで最も栄えている駅という点も踏まえて盛岡駅にも出しました。

 コピーとデザインは、弊社のそれぞれの責任者がやってくれました。彼らに私の生い立ちを話したら、広告にしたほうがいいって勧められて。恥ずかしい話ではあるけど、父に「ありがとう」と言ったこともなかったので広告も兼ねて感謝できたらみたいな。

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――2駅での掲出ですけど、費用対効果は。

足澤 ユーザーが一気に2万名も増えました。コピーもデザインも弊社のそれぞれの責任者がやってくれたし、二戸駅ではB0サイズ(1030×1456mm)で1週間の掲出だと2400円、盛岡駅はその半分のB1サイズ(728×1030mm)で1週間出すと4800円。合わせて7200円で2万ユーザー獲得ですから、すごい費用対効果ですよ。

――広告を出したことで、お父様に対してはスッキリされたというか。

足澤 そういう感覚はありますね。一方で、献体もそうだけど、広告のネタにしちゃってごめん、お疲れ様というのもあります。

 あと、やっぱり広告にもある「お金に関して考えるチャンスをくれてありがとう」という気持ちですね。状況はどうであれパソコンも与えてもらったし、特殊な家庭環境で育ったことで金銭感覚を養えたし、“得した感”は結構たくさん受けていたなって。なんか、父も農家の会議なんかで集まった人には僕のことを「自慢の息子だ」なんて言っていたことを後から聞きましたし。

知識さえ身につけていれば、這い上がるチャンスがある

――かなり前から貧困の問題はありましたし、現在はコロナで大変な状況ですよね。今回の広告は、シチュエーションはそれぞれ違えども目にした人それぞれになにかしら刺さったと思います。

足澤 「自分語りするな」みたいな声もありましたが、意外と同じような境遇の人たちからのコメントをたくさんいただいて。

 僕みたいに発信できちゃう人に関しては、そういう境遇を昇華できていたりするのかなと思うんですが。現時点で学生さんであったり、まだ働けなくて苦しんでいるみたいな人には、それをバネにすれば将来大きなことができるかもよとは伝えたいですね。

 

 あと、昔は貧乏だったら貧乏のままでいるしかなかったけど、いまはネットもあるから選択肢も情報も多いですよね。お金の知識も学ぼうと思えば学べると思うんです。それこそお金の知識さえ身につけていれば、うちの父も這い上がるチャンスがあったはずなので。

写真=平松市聖/文藝春秋