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――エントリーしたときは奨励会2級でした。女流棋戦でどれくらい戦えると思っていましたか。

加藤 実は奨励会1、2級の頃が、一番自分の将棋に自信を持っていて「負けない」と思っていました。しかし、1次予選の初戦、渡辺弥生女流初段戦で必敗の局面になってしまいました。運よく勝つことができましたけれど、自分の将棋はまだまだ未完成だと痛感しました。このままではいけないと、それから急いで頑張った感じです。

清水女流六段を下し、加藤桃子女流王座が誕生

 第1期リコー杯女流王座戦五番勝負は、2011年10月から12月に行われた。加藤奨励会1級(女流王座戦を勝ち進む途中で昇級)は、本戦で千葉涼子女流四段、岩根忍女流三段、伊藤沙恵奨励会1級を破り、タイトル戦へと駒を進めた。当時の女流棋界随一の実績を持つ清水市代女流六段(当時)との五番勝負は大きな注目を集めた。通信制の高校で学ぶ2年生、16歳だった。フルセットの末、清水女流六段を下し、加藤桃子女流王座が誕生した。

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――初代女流王座のタイトルを懸けて清水市代女流七段と戦うことになり、どのような準備をしましたか。

加藤 清水先生は女流棋界のレジェンドで本当にすごい方。小さい頃は清水先生の棋譜を並べて勉強していました。その方と当たるわけですから、「どうしよう」という気持ちにはなりました。棋譜を改めて並べて研究し、作戦を練ってタイトル戦に臨みました。

――初めてのタイトル戦では、お母さまが一緒に対局のホテルに泊まったりサポートしてくれたそうですね。

加藤 不慣れだったので、母の存在はありがたかったです。ホテルに着いたら休む間もなく取材ということもあり、そんな時、すぐに食べられるものをサッと出してくれました。思い返せば、小学生時代、御徒町将棋センターで指すようなときも、ゆで卵やおにぎりなどを近くのデパートで買ってきてくれたり、食事面でもいつもサポートしてくれていました。

対策を以前よりされるように

――フルセットの末、タイトルを獲得したときの周りの奨励会員の反応を教えてください。

加藤 「おめでとう」は言われましたし、「すごいね」と褒めてくれる人はいました。ただ、奨励会員という立場なのに賞金(500万円)をいただくわけで、どうしても強烈な言葉を浴びせられました。特に先輩や段級が上の方から「なんであの将棋で、あのお金もらえるの」とか「500万の将棋じゃない」と言われたこともあり、「ひどい」と悔しかった。そう言われないよう、将棋の内容を良くできるように頑張るしかないのですが。

――女流王座戦ではタイトル戦含めて棋譜が公開されます。奨励会員に研究されて不利になったりはしませんでしたか。

加藤 正直、あたりがきつくなり、例会で指して「私の将棋の対策を以前よりされている」と感じることはありました。でも、タイトル戦に出て良かったなと思っています。