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「具材は2つ」だから、スケールメリットを最大化できる

 気になるその作り方は。

「テイクアウト部門の構成比は、豚まんが約65%。焼売が約15%を占めます。つまり、80%以上の商品を豚肉と玉ネギから作る。一度により大量の食材を仕入れるから、コストを抑えられるのです」

 じつは豚まんの食材は、「豚肉」と「玉ネギ」のみ。同じ原材料で、調味料の配合を変えて豚まんと焼売でまったく違った味の商品に仕上げる。

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©️iStock.com

 とくに鮮度を重視する豚まんは、「当日生産・当日販売」が基本。販売する日の朝に、工場で原材料を加工する。

 豚まんにはミンチ肉を使うのが一般的だが、551蓬莱では5ミリほどのサイコロ状にカットした豚肉を使い、食感とうま味を出す。使用する部位は次の3つ。

・バラ……脂身が多い

 

・腕……赤身が多い

 

・モモ……脂身と赤身のバランスが取れている

 3つの部位の豚肉を混ぜ合わせて、うまみある味に仕上げる。

 玉ネギも同様に、生のままサイコロ状にカット。嚙んだときに食感をより楽しめる。

 大阪府南部・泉州産の玉ネギを使っていたが、宅地化により生産が縮小。明石海峡大橋が開通したのを契機に、陸送が可能な淡路島産中心に切り替えた。淡路島産の玉ネギは糖度が強く厚みもある。時期的に調達しづらい場合も、淡路島産と同等レベルを仕入れる。

 その豚肉と玉ネギに、醬油、砂糖、塩などの調味料、でん粉を混ぜれば餡ができる。もっとも、その配合の割合は企業秘密だ。

約60店舗までにとどめるワケ

 その包容力ですべてを包み込む「皮」の製法を見よう。

 まず小麦粉やイースト菌などから作る生地は、時間とともにどんどん発酵していく。そのため、発酵のピークをコントロールすることが重要だ。

 その秘密兵器として、工場から店に運ぶ時間に応じて、発酵の進み方が異なる3種類の生地を用意し、店で切り分ける。

・約1時間で切り分けられる…お湯で練った発酵の早い生地(スグ)

 

・約2時間で切り分けられる…常温の水で練った発酵速度が普通な生地(フツウ)

 

・約3時間以上で切り分けられる…冷水で練った発酵の遅い生地(オサエ)

 これなら、いずれの生地もちょうどよく発酵のピークを迎えられる。さらに各店の店長によって、

 ・すぐに使いたいとき、お湯で練った生地を注文する

 

 ・あとで使いたいとき、冷水で練った生地を注文する

 と使い分ける。

 ただし冷水で練った生地ですら3時間ほどで発酵するため、工場から車でおよそ150分以内で行ける場所にしか店舗は置けず、トラブルなども考慮すると滋賀にある草津近鉄店あたりが限界になる。

 生地をおいしく安定提供し、本部としてあらゆる要素をくまなく管理できる上限は60店舗程度とみて、その範囲内で商売する。目の届く範囲でお店の質を守るからこそ、全国には出店しない。こうして、関西での551ブランドが強固になった。