文春オンライン

2022年の論点

サブスクに最適化した3分を切る「短尺」、ベタな「ディスコ」のリズム…BTSが全米チャートを席巻できる“音楽的理由”

サブスクに最適化した3分を切る「短尺」、ベタな「ディスコ」のリズム…BTSが全米チャートを席巻できる“音楽的理由”

2022/01/05

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, 芸能, 音楽, 国際

note

シンプルなのに飽きが来ないし、コスパが良い

 しかし、BTSの音楽がさらに凄いのは、そんなシンプルなリズムとコード進行の上に乗るボーカルにも、ある極端な特徴を持たせていることだ。

 百花繚乱・千変万化……7人のメンバーが手を変え品を変え、リードメロディからハーモニー、オブリガート、さらにはラップと、たった1曲、たった約3分の中に、これでもかこれでもかと変化を付けた・付けまくったボーカルを乗せる・乗せまくる。

 ここらあたりも、単一のメロディを最初から最後までユニゾンで歌う(それも単一の衣装、単一の振り付けで)日本の多くのアイドルグループと根本的に違うところなのだが。

ADVERTISEMENT

(左から)V、SUGA、JIN、JUNG KOOK、RM、JIMIN、J-HOPE ©getty

 話を戻すと、シンプルなリズムとコード進行という「下半身」による分かりやすさ、間口の広さ、「思わず腰が動く」感じに、変化を付けまくったボーカルという「上半身」による、楽しさ、飽きさせない感じ、さらには満腹感。それがたった約3分の間に詰め込まれているという(コストパーならぬ)「タイムパー」の高さ――これらが全米、ひいては世界を席巻したBTSの音楽の魅力の全容なのである。

 シンプルで、とっつきやすく、分かりやすく、使いやすい。なのに、飽きが来ない、お得な感じ――これらは、ソニーのトランジスタラジオや、ホンダのCVCCエンジンなど、昭和の時代に米国市場を席巻したメイド・イン・ジャパンの魅力とぴったり重なる。

 もしかしたら彼らの音楽は、日本経済の世界的復権に向けた重要なあれこれをも、示唆しているのかもしれない。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。

サブスクに最適化した3分を切る「短尺」、ベタな「ディスコ」のリズム…BTSが全米チャートを席巻できる“音楽的理由”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

ノンフィクション出版をフォロー