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「算数ができない我が子」に勉強を教えながら考えた、ビジネスに求められる“数学的素養”

2022/07/08

genre : 社会, 教育

note

正確に把握し適切に判断する技術は、数学に詰まっている

 逆に言えば、数学と国語(語学)の能力は私からすれば地続きであって、物事(設問)を正確に理解する能力と、起きたことを判断する能力はこの能力で決まっているのでしょう。残りの理科の一部や社会のような知識は、問題を認識しようとしたときに調べればいいじゃん、そのための情報化社会だろということで、むしろ知識は分野によっては急速に進歩していくわけですから、知識の領域を広げれば広げるほど最新の状態にキープするためのメンテナンスが大事になり、高度な知識領域で勝負するほどに専門家として狭いところをしっかりとフォローしていく作業で多くの時間を取られるようになります。

 そのためにも、数学の能力は必要だ。

 だって、物事を正確に把握し、適切に判断する技術は数学に詰まっているんだから。

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 しかしながら、部下や取引先の質問に答えたり、子どもの勉強を教えるなどしていて、算数や数学を理解するのに時間がかかり、量的概念や確率、分布といった感覚がうまく身につかない人は、かなりの意味で、相当な時間をこの勉強に費やさなければならないのではないかと思います。

 クライアントの経営陣にグラフで状況を説明していたところ、頓珍漢な質問が飛び出し、よく聞いてみたら微分積分も確率も理解ができず、超絶簡単な四象限のマトリクスに落とし直して再説明しないと通り一遍の理解も得られなかった事例もありました。ビジネスで必要なリスク計算とは割合や確率の問題なのですが、人によって、ほんのわずかなリスクを回避するためにその事業や取り組み全体をやめようとする人が出るのは、大抵においてリスクに対して備えるコストを考えられず、中国のゼロコロナ政策のように過剰評価をしてしまうことになります。

 大変な利益率を出し、経済誌でも絶賛されるようなハイテク企業の経営者でも、意外と基本的な数学的なセンスを持ち合わせていないこともあるのだなと思うこともしきりです。

©iStock.com

 他方、地方で仕事をしていると、なんかこう地元財界の若虎みたいな人物が暴走族上がりのような経歴を恥じつつ地元で建設も飲食も夜の仕事も頑張って仕切ってますというので話し込んでみたら、人員から経営状態から不動産価値、ロードサイドの人の流れまでほぼ完璧に頭に入れているケースなどもあります。