文春オンライン

特集観る将棋、読む将棋

LPSA設立15周年 中倉宏美女流二段が語る“代表”の仕事「イベントや大会が終わったらゴミ袋も載せて帰りますよ」

LPSA設立15周年 中倉宏美女流二段が語る“代表”の仕事「イベントや大会が終わったらゴミ袋も載せて帰りますよ」

中倉宏美女流二段インタビュー #1

2022/08/07
note

 より参加しやすい大会にしたい、地方在住ハンデをなくしたいと思い、各地区で大会を開いて地区代表を決め、全国大会へ行ける方式にしました。スポンサー様の協力もあり、代表者が全国大会に参加するための交通費も補助しています。とはいえ、大会経費があまりかからないような工夫はしています。その地域に根付いている道場や地元で普及活動をされていている方などが大会運営に協力してくださり、会場を無料で提供していただくこともあります。今年高知で四国大会を実施したのですが、高知出身の島井さん(咲緒里女流二段)が地元の人脈でいろいろお願いしてくれて実現しました。

 年齢問わず参加できる女子アマ王位戦についてもお話しさせてください。今年からレオス・キャピタルワークス様に冠スポンサーとしてご協賛をいただき、「ひふみ杯 第15回女子アマ王位戦」として開催することになりました。全国8か所の地区予選の他、将棋対局アプリ「将棋ウォーズ」でも予選を開催し、将棋界最大規模の女性アマ大会となります。

「頑張る女性を応援したい」というお話で、LPSAの存在意義にも通じるところがあり、本大会の価値を認めてくださったことは本当に嬉しかったです。女性の競技人口増加とレベルアップにつながるよう、引き続き盛り上げていきたいと思っています。

ADVERTISEMENT

コロナ禍を機にオンライン指導を増加

――次世代の女の子の育成としてはGSP(ガールズ将棋プロジェクト)にも取り組んでいますね。クラウドファンディングもされていました。

中倉 皆様にご協力いただき感謝しています。女流棋士と、アマ強豪でLPSAの技術アドバイザー遠藤正樹さんによる将棋の指導に加え、女流棋士の仕事とはどんなものか、マナーや心構えなどのお話もしています。

女流棋士を目指す女の子が参加するGSP(ガールズ将棋プロジェクト)では手厚い指導が行われている(写真提供・LPSA)

――遠藤さんといえば、アマ将棋界のレジェンドと言っていい方ではないでしょうか。棋士のエッセイなどにも将棋への情熱が素晴らしいと何度も登場されています。

中倉 遠藤さんは将棋の技術がしっかりした方で、そこを教えていただきたいのと、アマ棋界で信頼が厚く、「遠藤さんがいるなら安心して任せられる」と保護者から言っていただける方なのでお願いしました。

 コロナ禍を機にオンライン指導の機会を増やし、遠藤さんは毎日のようにメンバーの誰かと指しています。多い子は週2回教わっているとか。一人ひとりの棋力や特性に合わせて、勉強のメニュー作成もお願いしています。あとは、レベルの高い道場や大学将棋部など、ご自分のツテでもっと指せる場所を紹介してくれたりも……。

 遠藤さんだけでなく、女流棋士と指す機会も設けています。特に若手の堀さん(彩乃女流1級)と田中さん(沙紀女流1級)が熱心に教えています。

 

大人になってから夢を追う方も応援したい

――今は女流育成会(※女流版奨励会のような会で、14年前からは男女混合の研修会で規定の成績をあげれば女流棋士の資格が得られるように変更された)がありません。女性だけで強化を図る場がなかなかないのですが、女の子を集めるメリットはあるのでしょうか。

中倉 やはり研修会でも他の将棋の世界でも、女の子は少数派なので仲間づくりが難しい。自分が子どもの頃は、女の子の仲間が少なくて寂しかった。同性の友達がいたら、もっと楽しく将棋ができると思っています。GSPでは女流棋士という共通の夢を持った女の子がライバル、仲間として、励まし合い競争しながら棋力を伸ばしています。