――直近でLPSAの所属女流棋士となった田中女流1級はGSPメンバーではなく、以前女流3級だったときは日本将棋連盟に所属していました。LPSA入りのいきさつを教えてください。
中倉 一度女流3級になって規定の成績をクリアできずアマに戻ってから、LPSAの大会である女子アマ王位戦で2020年に優勝するなど活躍していました。田中さんの師匠である大野八一雄七段の教室で一緒に学んでいる堀さんから、田中さんがLPSAにも興味を持ってくれているという話を聞き、私たちとしてはぜひ、LPSAに来てほしいとお話ししたところ、「女性への将棋普及など新しいことが学べそう」と仲間になってくれました。最近、LPSAでYouTube配信を始めたのですが、田中さんも積極的に関わってくれてとても頼もしいです。
LPSAは小さな団体ということもあり、フラットな関係というか田中さんのような若手でもどんどん意見を言ってほしいなと思っています。今年、田中さんの出身地である石川県で女子アマ王位戦を初めて開催するのですが、田中さんが動いて地元の協力を取り付けてくれました。「北陸担当大臣に任命するね!(笑)」と言ったら、「はい、頑張ります!」と。
将棋も頑張っていて、女流順位戦でC級と女流棋士1級への昇級を決めました。私は、対局場の将棋連盟で待ち構えてお祝いを言って、動画も作ってしまいました。
経費を削るために、サロンを断念
――動画は、昇級直後の興奮気味の喜びが伝わって良かったですね。さて、ちょっと聞きづらい質問もさせていただきます。LPSAは財政的にも苦しい時期があったと他のインタビューで話されていましたね。
中倉 最初は芝浦に将棋が指せるサロンと事務所を兼ねた場所を借りていました。女流棋士が交代で常駐し、いつ来ていただいても将棋のお相手ができるようにして収益を上げようとしました。でも想定していたようにはお客さんは来なくて、女流棋士はただ待っている時間も長くて……。何年かして財政面を立て直すためには経費を削るしかないと決断してサロンは断念し、事務所機能だけの場所に移転しました。
――東京で広い場に家賃を払い続けるのは大変ですものね。
中倉 はい。財政面では、LPSAの外部理事からもずいぶん学ばせていただきました。女子アマ団体戦のチーム取りまとめなどをして人望がある林逸子さんと親しくなり、女性ファンの意見も聞け、組織運営のアドバイスもいただけると外部理事をお願いしたのです。銀行や大企業でキャリアを積まれている方なので、企業としての考え方やコンプライアンスなど、幅広くアドバイスいただいています。企業に勤めたことのない私にとって、一般的な視点がいつも参考になります。外部理事を引き受けていただいて感謝しています。
サロンは閉じましたけれど、千代田区麹町にあるダイヤモンド囲碁サロンを間借りして、予約制で女流棋士と対局していただくようにしています。高級感のあるお部屋を借りることができ、良い雰囲気で女流棋士との対局を楽しんでいただいています。
写真=石川啓次/文藝春秋