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――一時は『GROOVE LINE』でもリポーターが街に繰り出すコーナーがありました。昔のAMラジオのお昼の番組が行っていたようなアプローチでした。

西沢 そうそう。「いま、どこそこの公園に来てますよー。みなさんがCD持ってきてくれたら、好きな曲を一曲かけますよー?」でも何でもいいじゃん? ゆる~い遊びの要素も必要だと思う。昔といまとでは、そこで人が集まるかどうかを問われるメディアとしての影響力も大きく変わったけど、局の店構えが大きくてスタイリッシュなイメージになればなるほどゲリラな動きは敬遠されがちになる。あと、プロのラジオDJについても思うところはありますね。

©文藝春秋 撮影/石川啓次

ピストン西沢が心配する“ラジオ業界のミライ”

――と、いうと?

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西沢 いまラジオで人気のプログラムでしゃべっているかたは、主に芸能人、アーティスト、クリエイターなど、ラジオの他に本業を持っているかたがたです。ポッドキャスト番組も同じですね。もちろんそれは全く構わないし、上手いかたも面白いかたもたくさんいるんだと思います。ただ、一方で、どの局もプロのDJを使いたがっていないように映るし、育てる環境作りにも前向きじゃないように見える。

――ピストンさんが考えるプロのDJの定義とは?

西沢 常にリスナーと生で交わす双方向のコミュニケーションを意識して、聴き手をラジオの前から逃がさないようにまとめ上げつつ、急な速報やリアルタイムのハプニングなどにも対処することの出来る人材です。

 ラジオの本質を理解して、なおかつラジオにおけるスポンサーとの関係性や営業行為を意識しながら、きちんと番組を遂行することの出来るスキルの持ち主が、僕の考えるプロのDJですね。

©文藝春秋 撮影/石川啓次

――なるほど。

西沢 僕はそもそも全く社交的な人間じゃないし、音楽業界という畑からラジオ業界にやって来て、始めの頃はトークも全くダメだった。でも、たった一つ、ラジオ向きの特性が最初から備わっていた。それは原稿を全て初見で読める能力。アナウンスの教育や訓練も受けていないのに、初見のニュース原稿でも事実関係が間違っていないかどうか、読みながら確認していける能力があったんです。

 だから生放送中にいきなり原稿を渡されても、すぐに頭の中で処理して、ぱっと読めた。「速報です。ええーっ、〇〇〇が覚せい剤で逮捕!? 何だとー!!」とかね(笑)。きちんとした原稿になっていなくても即座にアレンジしてしゃべれたんです。だいたい『GROOVE LINE』の放送は夕方4時半からだったけど、僕がスタジオに入るのは毎日30分前くらいの4時頃だった。しかもオンエアの1分前までスタジオの外でスタッフとだべってた(笑)。つまりどの原稿もほぼ初見で読んでいたの。