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「久留米」と豚骨ラーメン発祥の地

 なんでも、久留米は豚骨ラーメン発祥の地だという。発祥の地というのはうちが最初だいやうちだと論争になることが多いのでここで断じることはしないが、言われてみれば確かに久留米といえばラーメンだ。久留米にやってくる前の打ちあわせで、編集氏が「久留米といったらラーメンですよね!」と言っていたのを思いだす。

 こうして、久留米駅に降り立ってものの10分も経たないうちに、久留米といえば……に続くあれこれをいくつも頭に入れることができた。聖子ちゃんにチェッカーズ、からくり時計、ブリヂストン、ラーメン……。まったく、久留米駅というのはなかなかよくできた仕掛けの駅である。

 

駅前にはたくさんの人がいるが…

 そんなターミナルなのだから、もちろん駅の周りにはたくさんの人がいる。若い人から小さな子どもを連れたファミリー、出張とおぼしきおじさん、お年寄り。ただ、人口30万人を抱える中核市のターミナルにしては、ちょっと賑わいにかけるのではないか、とも思うのだ。

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 駅ビルにはラーメン店などが入っているが規模は小さいし、他に駅前に飲食店や商業施設の類いはあまり見えない。

 どでかいマンションが建っていたり、工事中のエリアがあったり、クルマ通りも多いし、大きな町であることは間違いない。それでも、どうしても賑やかさという点ではいまひとつという印象を抱いてしまう。

 駅のすぐ近くからは北に向かってその名もブリヂストン通りという大通りが延びていて、そこを進むとアサヒシューズやブリヂストンの工場に続く。

 もっと歩けば筑後川に接するかつての久留米城。江戸時代までは久留米の中心であったお城も、久留米駅からさほど遠くない場所にある。近代以降の久留米を支えた一大産業のブリヂストンも駅に近い。なのに、である。

なぜ「久留米」は大きな町なのに賑わいが“いまひとつ”なのか

 これには理由がある。地図を見れば一目瞭然、久留米の町にはもうひとつのターミナルがあるのだ。JRの久留米駅からずっと東、西鉄久留米駅。大手私鉄の一角である西日本鉄道の久留米駅である。

 

 西鉄の全駅の中で、福岡市内を除くといちばんお客の多いのが西鉄久留米駅だ。お客の数はJRの久留米駅の4倍以上。つまり、西鉄久留米駅が久留米の町の実質的なターミナルとしての役割を持っている、ということになる。

 ならば、JR久留米駅から西鉄久留米駅まで歩いてみるしかなかろう。久留米の町の中心は、ふたつの“久留米駅”の間に広がっているのだ。