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 どうやら直前に島を襲った台風により、西部林道の一部区間が崩落し全面通行止めになっているらしい。滞在中の早期復旧は絶望的な状況とのことで、仕方なく猿を求め山の方へレンタカーを走らせた。

 漠然と山道を進むと程なくしてひとつの群れに遭遇したが、猿たちの警戒心が強く遠方からの撮影が精一杯だった。最初に出会ったヤクザルということもあり若干後ろ髪を引かれる気持ちもあったが、早々に諦め先へ進んだ。こういうときは深追いしたところでロクな結果は得られない。

防護柵のワイヤー上に佇むヤクザル ©️大島淳之

 私は2022年4月から被写体を猿に絞って撮るようになり、嵐山(京都)、地獄谷・志賀高原(長野)、高崎山(大分)、人間以外の霊長類北限となる下北半島(青森)など、猿を求め各地を巡ってきた。

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 浅い経験なりにフィールドでの実体験を通し感じ取ったことだが、群れにはそれぞれ個性があり、同じ土地に暮らす猿(鹿)でも群れによってその性格は千差万別。ほとんど人間を気にしない群れもあれば、視界に入ることさえ嫌がるような群れもある。後者を無理に撮影したところで、写真のどこかしらに撮影者へ向けられた緊張感や警戒心がにじみ出る。何より動物に過度なストレスを与えることがあってはならない。

森へ向かうと天候が一転。空は晴れ渡り、ようやく…

 さらに山道を進んだが、その後は結局一頭の猿も現れなかった。宮之浦港のあるエリアまで引き返し、今度は反時計回りに沿岸部を回って、通行止めになっている西部林道北端の屋久島灯台付近まで行ってみたものの、こちらも空振り。痕跡一つ掴めなかった。

 次第に雨脚が強まり、再び宮之浦港まで戻ってきた頃にはバケツを引っくり返したようなどしゃぶりに変わっていた。外を歩くのもためらわれたため、周辺の公共施設で情報をかき集め、西部林道南端の大川の滝から数キロ先までは入っていけることを確認できた。

 個人的な印象として、その辺りのヤクザルとヤクシカは警戒心が強く、特にヤクシカは、どれだけ距離を取っていてもこちらの存在に気づいた時点で逃げ出してしまうため撮影は困難を極める。ただ、猿や鹿と会えぬことには始まらないので、とにかく行けるところまで行ってみることにした。