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 ジャニー氏の少年への性加害は1965年の新芸能学院との裁判で取り沙汰されたが、訴訟では事実認定されず終わった。1980年代には元フォーリーブスの北公次が著書『光GENJIへ』で性被害を告発するも、その事実を検証されるどころか、「頭がおかしい」と流布された。元タレントの告白本も「暴露ビジネス」という扱いで、積極的に報じようとするメディアはまずなかった。

 99年の文春報道ではジャニーズから裁判を起こされ、最大のポイントである「少年への性加害」が高裁で事実認定されたのだが、その詳細を報じた大手メディアは皆無。ジャニー氏らの上告棄却を報じた新聞はベタ記事で肝心の内容はまったく伝わらなかった。重大な性犯罪と報じたのはニューヨークタイムズなどの海外メディアのみで、今回のBBCの構図と同じである。文春取材班は自民党の阪上善秀議員に国会で質問・追及してもらい、多くのメディアに「連帯して報じよう」と呼びかけたが、「上が乗り気ではない」で終わった。あのとき世間に真実が伝わっていれば、カウアン氏ら若い世代の被害者が生まれなかったのではないか、と今も悔やまれる。

メディアとの結託

 ジャニーズとビジネスで密接に結びついているのはテレビ局だが、なぜ、普段国民を啓蒙する立場の“社会の木鐸”がジャニーズ性加害問題を積極的に取り上げなかったのか。

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「ひとつは一般紙とスポーツ紙、テレビ局のクロスオーナーシップが根底にあります。系列グループとして自分たちが損するようなことはしたくない。ふたつ目はジャニーズファンの多さを無視できない。ある意味“信者”ですから、反発を避けたいという心理があります。最後は現実的な話ですが、ジャニーズから多額の新聞広告をもらっているからです。そこは弱腰です」(全国紙社会部記者)

 ジャニーズの権力に着目すると、圧倒的な経済力が浮上する。1962年創業のジャニーズ事務所はジャニー氏と彼を経営で支える姉、藤島メリー泰子氏(93歳没)の両輪で発展してきた。

 飛躍のもとは国民的アイドルとなったSMAPの成功で、1993年に約16億円だった売上は2001年には120億円を突破。現在ファンクラブの会費収入だけでも520億円とされ、非上場ゆえ情報を公開していないが、グループ売上は最低1000億円以上。

 テレビや新聞だけでなく、批判記事を書いていた週刊誌も、カレンダーや写真集の権利と引き換えに転向する経緯を見てきた。金と権力を有するジャニーズは、接待や利益供与でメディアをコントロールし、現場では新人をバーターブッキングしたり、要求を飲まないと「ウチのタレントを全部引き上げる」という圧力を使いながら、長い年月をかけ「ジャニーズを最優先に考える」ことをテレビマンの常識にしてきた。オワコンと揶揄されてもテレビは依然メディアの王道であり、宣伝のメインストリームである。