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 別の元タレントも言う。

「合宿所でトランプしていたら、ひとりがジャニーさんに部屋に呼ばれた。勝手を知った奴が手招きして、こっそり隙間から覗いたら、『痛い、痛い』って突っ伏して泣いていた。一緒に覗いた奴は『芸能界でやっていくために我慢しなきゃいけない。お前は実家住まいでいいけど、田舎から来ている俺たちはここを出たら帰る場所がないんだ』と諦め顔でした」

 悲惨な現実は知りたくないという意見もあるだろうが、あえて書いたのは大もとの犯罪の悪質性を知らずして、ジャニー氏の本性を語れないと思ったからである。

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徹底した素顔を見せない主義

 ジャニー氏は多くのタレントを発掘・育成し、「ジャニーズ帝国」を築いた。スターになった彼らはジャニー氏がいかに愛すべきキャラなのかをテレビで嬉々として話し、ファンからも支持された。2019年に死去したときは、「子どもたち」と称するタレントに家族葬で見送られ、東京ドームのお別れの会には9万人以上が参列、安倍晋三総理も弔電を送った。朝日新聞『天声人語』は「希代のプロデューサー」と持ち上げ、芸能界やメディアは最大の賛辞を送り、国民栄誉賞を授与すべきだという意見も出た。だが、これほど有名な人物なのに訃報の写真は帽子とサングラス姿。素顔を見せない主義は徹底しており、リハーサルで音楽記者が声をかけると身を隠してカーテン越しに会話をしたという逸話がある。NHKが一番のお気に入りだったというジャニー氏は、そのポリシーを曲げ一度だけ番組に出演したが、なんと後ろ姿のみを映すという異様な出方であった。

「素顔を頑なに出さないのは後ろめたいからでしょう。密着映像で正面を映さなかったのは前代未聞で、番組にしなきゃいいという意見もあった。それだけNHKはジャニーズとズブズブの関係で、公共放送なのにジャニーズしか出さない『ザ少年倶楽部』が批判されても20年以上続いているのはその証。リハーサルスタジオも優先的にジャニーズのレッスンに提供されていて、他部署から苦情があっても、ジャニーズの印籠が効いていました」(NHK関係者)

 “天下のNHK”でさえジャニーズにひれ伏すのであるから、ドラマや広告などで利益をともにする民放は、NHK以上に言いなりになっていても不思議ではない。特別チームが、ジャニー氏の性加害が長期にわたった背景に「マスメディアの沈黙」があったと言及したのも当然である。

 今回の一連の出来事の端緒になったのはBBCのドキュメンタリー『プレデター(捕食者)』である。3月に放送され世界で反響を呼んだが、日本の大手メディアで後追いするところはなかった。被害者のカウアン・オカモト氏が外国人記者クラブで会見したことでようやく共同通信が報じたが、ほとんどの大手メディアは様子見をしており、習慣化したジャニーズへの忖度を相変わらず続けていた。