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曲の力が生んだブレイク

「君はロックを聴かない」は、完成したときにはあいみょん自らシングル曲にすることをスタッフにアピールしたという勝負曲。青春をテーマにノスタルジックで切ない味わいを持つこの曲は、今に至るあいみょんのアーティスト性を確立した最初のきっかけと言える。この曲がラジオで記録的なパワープレイを獲得し、ブレイクへの機運は高まりつつあった。

 そして、あいみょんが大きく世に名を知らしめた曲が2018年にリリースした「マリーゴールド」だ。ただ、実はこの曲、ドラマ主題歌やCMソングなどのタイアップや大掛かりなメディア露出があったわけではなかった。

 あくまでラジオのオンエアなどを通じて広まったため、ブレイクを生んだのは“曲の力”だった。

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 この頃は音楽の聴かれ方がCDからストリーミングサービスへと移り変わっていった過渡期でもある。この曲はストリーミングサービスのランキングで上位を席巻したことからテレビの音楽番組でも大きくフィーチャーされるようになり、さらなるロングヒットにつながった。紅白歌合戦に初出場を果たしたこの年にあいみょんのことを知った人も多いだろう。

2018年の紅白歌合戦、リハーサルで「マリーゴールド」を弾き語るあいみょん ©文藝春秋

カルチャーの影響を受けた『クレヨンしんちゃん』主題歌も

 音楽だけでなく、映画やアートなどさまざまなカルチャーを愛し、そこから受けた影響を血肉化して表現に昇華しているのもあいみょんの魅力のひとつだ。

 なかでも本人が憧れの存在の筆頭にあげているのが、岡本太郎。「いつか太陽の塔の下でライブをするのが夢」だと公言している。メジャーデビューシングルのカップリングに収録された「今日の芸術」も岡本太郎のことを歌った一曲だ。

 2019年には、あいみょんは『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~』の主題歌として書き下ろした「ハルノヒ」をリリースしている。あいみょんのクレヨンしんちゃんに対しての愛も大きい。

 というのも、敬愛する岡本太郎や吉田拓郎のことを知ったきっかけが、子供の頃に観た映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』(2001年)だったという。同作は昭和の世界に惹かれノスタルジーに耽溺する大人たちの姿をモチーフにしたシリーズ屈指の名作だが、それから18年後に主題歌を書き下ろすというのは、あいみょんにとっても念願の機会だったはずだ。

 また、この頃からは、あいみょんの友人関係や様々なアーティストとの繋がりがクリエイティブに結実していくようになっていった。