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街道沿いに漂う“工業地帯・溝ノ口”の面影
2本の街道が交わっていたのは、田園都市線沿いに少し北に歩いてお隣の高津駅すぐ近く。大山街道沿いは、いまも江戸時代から続く店がいくつか残る商店街になっている。工場ができる以前からの市街地だから、いわば溝ノ口の原点といっていい町並みだ。
せっかくだから、大山街道を少し歩く。府中街道と交差するあたりはいかにも昔ながらの街道筋の商店街。そこから南に進んで駅が近づくと、ポレポレ通りの賑わいの影響を受けたのか、少しずつ活気づいてゆく。
南武線の踏切の脇には、駅方面に通じる抜け道をそのまま活かしたような「西口商店街」がある。バラック建てで、歴史を感じさせる飲み屋が並ぶ。戦前からのものなのか、それとも戦後の闇市が発祥か。そのあたりは不明だが、少なくとも“工業地帯・溝ノ口”の面影を感じる一角といっていい。
南武線の踏切を渡ってさらに南に進むと、大山街道は坂を登り始める。直線ではなくカーブを繰り返しながらうねうねと、ゆっくりゆっくり坂を登る。それほどキツい坂ではないのに、気がついたときにはかなり高いところから駅周辺を見下ろすほどのところに出ていた。その周辺は、完全なる住宅地。溝ノ口の市街地としての賑わいから離れた高台は、どちらかというと高級住宅地といったところだろうか。
つまり、東西に走る南武線の南側はすぐに山。北は多摩川沿いの低地だ。こうした地理的な条件も、溝ノ口の発展にいくらか寄与したのかもしれない。