かつて駅があった場所はいま…

 そして、かつて駅があった場所はバスターミナルになった。団地に暮らす人々に加え、横浜薬科大の学生たちが列を作ってバスを待っている。

 

 横浜ドリームランドの開園から60年あまり。閉園してからも20年以上が経った。ホテルエンパイアと「ドリーム」の名を頂く団地や施設を除けば、かつての夢の国の痕跡がここまで消え失せるというのは、時の流れの残酷さというべきか。

 

 そう思いながらさらに周囲を歩いていると、小さな神社が見えてきた。相州春日神社という、小さくとも立派な構えのお社だ。

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 近づいて縁起などを見てみると、なんでも奈良の春日大社から分祀したのだとか。ドリームランドは元祖が奈良。結婚式場には春日大社の神職が奉仕していた。そこで、それをそのまま横浜に、ということで春日神社ができたのだ。

 

 ドリームランドが閉園してからも、神社は続く。傍らにあったのは神鹿苑。奈良公園の鹿の血を受け継いだ鹿たちが暮らしているのだとか。ちょうど訪れた時には、子鹿が母鹿に見守られながら立ち上がろうとしていた。消えたドリームランドのすぐ脇で、春日神社の神鹿は命をつなぐ。夢はまだ、終わっていないのかもしれない。

写真=鼠入昌史

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