つくば市にある当時県営だった洞峰公園についても県が“高級路線”に変更しようとしたが、つくば市が待ったをかけた。県は2021年、キャンプやバーベキューができる施設を整備するため、民間資金を活用する「パークPFI方式」によって事業者を募集。県や事業者の計画は、豪華な「グランピング」施設やカフェ、テニスコートなどのレジャー施設を2022年にオープンさせ、その収益で公園の維持管理の約2億円を賄い、県の財政負担を軽くするというものだった。

 だが、同公園は静かな環境が地域住民に好まれる市民の憩いの場だったことから、五十嵐立青・つくば市長が県の計画に反発。すると、県が市に公園を無償譲渡することとなり、洞峰公園は2024年2月に県からつくば市に移管された。23年12月23日の朝日新聞は、「知事の頭には最初からグランピングか無償譲渡の二択だった」、「知事と市長が正式な話し合いをせず、無償譲渡を引き受けざるを得なかった」、「背景には大井川知事と五十嵐市長の『不仲説』がある」などと報じている。筆者の取材でも、「自分の意見に反発したつくば市に対して、2億円のコストを押し付けた」というもっぱらの評判だ。

 複数の自治体議員が「大井川知事にとって、歴史や文化、芸術そのものだけでは価値がないも同然。そこにレジャーの要素を取り入れ、富裕層がお金を落とし、儲けて初めて価値を認めるという考えだ」と批判する。江尻県議も「県民の税金で作った県の施設を無料で開放するのは当然のこと。それなのに県立図書館には珈琲チェーン店を、偕楽園には結婚式場をと収益事業を持ち込む。公共の福祉という場に儲ける仕組みを導入することが行政の役割ではない」と憤る。

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 このように“高級路線で儲ける”ことを好む大井川知事は就任後、老朽化を理由に知事公舎に住むことはなかった。2020年12月の写真週刊誌『FLASH』で、大井川知事が水戸市に住民票がありながら、県庁から公用車で家族が住む千葉県浦安市のマンションに移動していたことがスクープされた。知事が個人で所有する浦安市のマンションはディズニーリゾートに近い。4LDKの中古物件でも8000万円前後する、いわゆる「億ション」だ。2022年に解体された県公館の迎賓館と知事公舎の敷地は、売却された。一般競争入札の結果、跡地には2024年11月に食品スーパー「かわねや」が開業した。地域住民は「スーパーがあれば便利だが、老朽化といっても歴史的建造物。簡単に売らずに改修して観光名所にして残すなど、方法はあったはず」と残念がる。

自民王国いばらき

茨城県庁 ©時事通信社

 このような県民無視とも言える多くの施策がまかり通るのは、自民王国だからこそ。県内では「自民党と公明党がイエスといえば大半のことが通る」(複数の自治体議員)とさえ言われている。

 大井川知事の初陣では、元は自民党県議や市議だった当時の首長らが結束した。ひたちなか市・本間源基市長、笠間市・山口伸樹市長、高萩市・小田木真代市長、坂東市・木村敏文市長、古河市・針谷力市長、利根町・佐々木喜章町長の6人の首長は、政策協定8項目を締結して大井川氏を支援すると会見した。また現在、県議会議員の現職58人のうち自民は40人、公明は4人で、全体の約75%を占める。つまり、県議の4分の3が自民・公明なのだ。自民党が多数の議会ではチェック機能は働きにくくなる。