V9時代には選手として共にチームを牽引し、長嶋茂雄の監督時代にはコーチとして1996年の「メークドラマ」達成に貢献した、ディー・エヌ・エーのフェロー・高田繁氏(79)が秘蔵エピソードを明かす。
長嶋茂雄さんと最後にお会いしたのは、昨年11月に行われた巨人の球団創設「90周年セレモニー」でした。いつものように笑顔で、あいさつに応じてくれました。今年に入りお会いできていませんでしたが、ニュースなどを通じてお元気な姿を見て、安心していたものです。
6月3日、突然の訃報に接し、とても寂しく、残念です。それだけ、僕にとって長嶋さんは偉大でした。
若くしてプロ野球を国民的スポーツへと押し上げた「ミスタージャイアンツ」の長嶋さんと初めてお会いしたのは、僕が明治大から巨人にドラフト1位で指名された1967年のシーズンオフです。スポーツ新聞の企画で長嶋さんのご自宅にお邪魔し、一緒に写真撮影をしました。僕の緊張をほぐすように気さくに接してくれ、とても話しやすかったことははっきり覚えています。

僕が入団した68年の巨人は、3年連続で日本一と「V9」真っ只中の常勝軍団。長嶋さんと王貞治さんの「ON」はチームの大黒柱だったため、上位打線を任されていた僕や柴田勲さんがヒットエンドランなどの緻密な野球を求められていたなか、ふたりは自由に打つことが多かった。そうは言っても、試合の大事な場面では川上哲治監督がONに指示を出すことももちろんありました。しかし、サインを出される機会が少ないためか、長嶋さんの場合は見落としが多かった……というより、覚える気がなかったと思います(笑)。よく罰金を払っていました。
長嶋さんの行動が素だったのか、はたまた演じていたのか。それは本人にしかわかりませんが、とにかく“伝説”が多い人でした。
子どもだった長男の一茂さんと一緒に球場に来たかと思えば、試合後にはそのまま放置して帰ってしまった。上野駅でエンジンをかけたまま車を停めていることを忘れ、電車に乗ってしまうなど……。
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