おしっこの「色」と「出方」で分かる重大病のリスクとは?

特集 健康寿命はまだまだ延ばせる

近藤 幸尋 日本医科大学付属病院泌尿器科部長
ライフ ヘルス
おしっこの元は全身を循環する血液です。そこには様々な情報が詰まっている(取材・構成=緑慎也)

白く濁ったおしっこは

 普段何も意識せずに、おしっこをしている方も多いかもしれませんが、実は、おしっこには病気のサインがたくさん含まれています。注目すべきポイントは大きく2つ。1つは「見た目」、そしてもう1つは「出方」です。

「見た目」とは色、濃さ、濁りといったおしっこ自体の特徴。「出方」とは、すんなり出るか、それとも時間がかかるのか、夜中に何度も起きるのかといった排尿という行為自体に関する特徴です。

 そう語るのは、日本医科大学付属病院副院長・泌尿器科部長の近藤幸尋教授。内視鏡手術やロボット手術による患者の体をなるべく傷つけない低侵襲手術に定評がある、この分野の第一人者だ。
近藤幸尋先生 写真
 

 まず、おしっこの見た目で最も注意を要するのは血が混じっているかどうか。つまり、血尿です。

 以前、私も血尿が出たことがあります。CT検査の結果、明らかになったのは尿路結石でした。尿路結石はおしっこの通り道である尿路に結石ができる病気。結石が尿路を塞ぐので激しい痛みを伴います。私の場合、「あれっ、おかしいな」という程度の痛みを感じていましたが、そのままにしていたところ、血尿に気づき、異変を自覚したのです。

 血尿が出る症状は尿路結石だけではありません。痛みが伴わない場合は、腎臓から尿道までのどこかに腫瘍があるか、膀胱がんの可能性もある。血尿は自然に止まってしまうこともありますが、とにかくすぐに泌尿器科を受診して頂きたいですね。

 色で言えば、おしっこが白っぽく濁ることもあるでしょう。その原因の大半は、細菌感染。大腸菌などの細菌に対して戦う白血球や、剥がれた膀胱の粘膜が混じるなどして、おしっこが濁ってしまうのです。

 細菌が増えて炎症がひどくなると痛みや発熱があるので、誰でも異変を感じます。しかし、そういった症状が出る前から、おしっこが濁ることもある。その“若干の濁り”に気づけるかどうかが大切です。というのも、感染症も早期なら経口の抗生剤で済みますが、酷くなると入院して点滴治療を受けなければならなくなります。同じことは膀胱がんについても言える。早期診断のメリットは大きいのです。

 しかし、普段から自分のおしっこを見ていなければ、痛みや発熱より前に異変を察知することはできません。職業柄、私は自分のおしっこを常にチェックしていますが、皆さんにも「おしっこをちゃんと見て下さい」と伝えるようにしています。

 注意を要するのは、昨今のトイレの照明や便器の色が、場合によっては、おしっこの観察には適していないことです。照明が少し暗かったり、オレンジっぽい光だと、おしっこの色を判別するのが難しくなる。適しているのは白い照明や白い便器ですが、もちろん便器はおしっこの色調を見分けるためだけに存在するわけではありません。

 一番いいのは、底が白い紙コップにおしっこを入れて見ること。とはいえ、そこまでしなくても、普段からよく自分のおしっこを見ておけば、「いつもより少し色が違うぞ」と気づけます。トイレの照明を蛍光灯に替えたり、便器の色を白に替えるよりも、おしっこを日常的に観察することをお勧めします。

泡立ちにも注意が必要

 おしっこには、見た目以外に臭いの特徴もあります。カレー、コーヒー、ニンニク、ニラなどを食べた後、おしっこの臭いが変わりますね。見た目の変化は実際におしっこに目を向けないとわかりませんが、臭いの変化はすぐに気づきます。

 ただし、おしっこの臭いの変化は体内の異変とはあまり関係ないと考えます。なぜなら、臭いは食べたり飲んだりしたものを反映しているだけに過ぎないからです。どちらかというと、臭いよりは色のほうを気にかけて頂きたい。ただ、水分摂取量によっても色は変わる点には注意して下さい。当然、おしっこの色は水分を多く取れば薄く、水分をあまり取らなければ濃くなります。それは異常なことではありません。

 また、おしっこの後の泡立ちが気になることもあるかもしれません。これは基本的には直前の運動や食事の影響が大きい。ただし、泡立ちがなかなか消えない場合は注意が必要。泡立ちが残るのは、尿にたんぱくや糖が含まれ、粘り気を帯びてしまうから。糖尿病の可能性もありますので、症状が続くようなら、一度、泌尿器科に相談してみましょう。

夜間頻尿と心疾患の関係

 次に、おしっこの「出方」について考えてみましょう。

 おしっこの出方で、よく問題になるのは回数の多さです。起きて活動している間の排尿回数は、8回程度までが正常範囲。排尿回数が10回を超えると「頻尿」と見なします。

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source : 文藝春秋 2019年12月号

genre : ライフ ヘルス