史上空前の株価は本物か バブルの火種を総点検する

緊急特集

河野 龍太郎 BNPパリバ証券チーフエコノミスト
唐鎌 大輔 みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト
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AI・半導体株、投資ファンド、ドル不安……バブルの火種を総点検

 唐鎌 9月18日、米ニューヨークダウ平均株価の終値は4万6142ドルを超えて史上最高値となり、日経平均株価の終値も同様に9月25日に史上最高値の4万5754円を記録しました。日米だけでなく世界的に株価が上がっているので、ここまで来ると、「バブルではないか」という危惧の声が出始めています。

 河野 つまり、AIや半導体企業のさらなる成長への期待が牽引している株価高騰に、暴落の危険性があるのではないかと。

 唐鎌 その通りです。株価だけでなく、2025年の世界経済を見渡した時に最高値更新に沸く相場を一気に暗転させる「火種」はどこに潜んでいるのか。それを河野さんと探っていければと思っています。

 河野 わかりました。それでは、まず初めに世界的に株価が上がり続けている要因の一つである、アメリカの政策金利の引き下げについて論じましょう。9月17日にFRB(連邦準備制度理事会、アメリカの中央銀行にあたる)は、政策金利を0.25%引き下げ、4.0~4.25%にすることを決定しました。年内にあと2回、さらに利下げされるだろう、と予測されています。これは今後も株価を下支えするでしょう。

FRBのパウエル議長 Ⓒ時事通信社

 唐鎌 利下げを求めるドナルド・トランプ政権に対して、なかなか踏み切らなかったジェローム・パウエル議長は「Mr.Too Late」(遅すぎる男)とトランプに揶揄されていました。17日の政策金利を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)の直前にトランプ側近のスティーブン・ミランがFRB理事に送りこまれ、その直後に利下げが決まったので、FRBがトランプの圧力に屈した印象を持った方も多いでしょう。決してミランが入ってきたから利下げをしたわけではないのですが、利下げを発表する会見では、パウエルの表情に葛藤と忸怩(じくじ)たる思いが見え隠れしていました。

 河野 アメリカの成長率は2024年の2%台後半から2025年前半は1%台半ばまで鈍化しているのですが、トランプ関税をかけられた国の企業は、輸出価格を下げる努力をしたので、アメリカの輸入価格は、懸念されていたほどには上がりませんでした。また、労働需要も鈍化しましたが、移民の抑制政策によって、労働供給も鈍化したので、労働需給は逼迫したままで賃金上昇率は下がっていません。ですから、今のところトランプ関税によって、引き起こされるかもしれないと恐れられていた景気後退や不況は起きていません。そのため、「FRBは利下げを先送りするのではないか」と囁(ささや)かれていました。しかし、結果的に2024年12月以来の利下げが行われました。

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source : 文藝春秋 2025年11月号 緊急特集 史上空前の株価は本物か

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