救いは日々の生活の先に

角田 光代 作家

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エンタメ 読書

『熟柿』佐藤正午/KADOKAWA

『四維街一号に暮らす五人』楊双子/中央公論新社

『インテルメッツォ』サリー・ルーニー/早川書房

 交通事故を起こしてしまった女性を描く『熟柿』が、今年いちばん心に残る読書だった。事故も、それによる離婚も、ひとりの人間にとっては大きな事件であるが、しかし描かれるのは、淡々とした生活である。その彼女の日々に、まるで吸いこまれていくように夢中で読んだ。彼女が出会う多くの人にもそれぞれの生活があり、だからだれのことも憎むことができない。どうぞ主人公の願いを叶えてあげてほしいと祈るように読むのだが、この小説の核は、どんなことがあってもつづいていく「生活」であるように私には思えた。救いとは、奇跡がもたらすのではなく、日々の生活の先にこそある。

 

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source : 文藝春秋 2026年1月号

genre : エンタメ 読書