『世界99』村田沙耶香/集英社
『反中絶の極右たち』シャン・ノリス著/明石書店
『生類の思想 体液をめぐって』藤原辰史/かたばみ書房
人類の身体の未来について考えさせられた3冊を選んだ。
『世界99』は、「正しさ」による統制がエスカレートし、欲望や感情が汚いものとして忌避されるようになった未来を描いたSF的小説。汚れ役を一手に引き受けるのは「ピョコルン」という愛くるしい人工動物だ。人々はこの生物に、料理や掃除などの家事のみならず、性欲処理と出産の機能までもをアウトソーシングしている。突拍子もないようにも思うが、欲望や感情のような生々しいものを忌避する傾向はすでに見られるし、人工子宮というテクノロジーが、人生のある時期を再生産にささげなければならないプレッシャーから自由になりたい女性と、少子化対策の有効な一手を探し求める国家の両方の思惑をかなえる日は、そう遠くないのかもしれない。怖くて面白くて頁を繰る手が最後まで止まらなかった。
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