常に人間のおかしみや面白さを引き出そうとしていた
仲代達矢さんが亡くなられたのを知ったのは、11月8日のことでした。ちょうどヨーロッパから帰国した日で、留守電に仲代さんのお嬢さんからのメッセージが残されていたのです。すぐにお会いしに行かなければと思い、お嬢さんにお願いして、翌日、お顔を拝見して、手を合わせることができました。立派にたくわえられていた髭は剃られていて、本当にきれいなお顔で安らかに眠られていました。

僕は「ありがとうございました」という気持ちをお伝えするばかりでした。縁もゆかりもない僕を無名塾で一人前の俳優に育ててくれたのですから、ただただ感謝の思いしかありません。
最後に会ったのは、今年の5月末のことです。
毎年のことなのですが、無名塾が長い公演旅行に出る前の初夏に郷里の長崎の親戚から送られてくる、おいしいスイカを仲代さんと塾生への差し入れとして持っていきました。大げさになるので、いつ行きます、とは言わずに時間が出来たときにふらりとうかがうのですが、たまたま仲代さんがいらっしゃって、少し話をすることができました。
能登半島地震のために延期になっていた、石川県七尾市の能登演劇堂での『肝っ玉おっ母と子供たち』の公演に出発される直前でした。いつものように「舞台やりなさいよ、一緒にやろうよ」と気さくに声を掛けてくださいました。
仲代さんは相変わらずお元気そうで、これから能登で2時間半でずっぱりで「おっ母」の役を演じられるのかと思い、感嘆と尊敬の念しか湧いてきませんでした。
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