いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
日産自動車のイヴァン・エスピノーサ社長は2025年7月15日、追浜工場(神奈川県横須賀市)での車両生産を27年度末に終了すると発表した。同工場で生産している「ノート」などは子会社の日産九州(福岡県苅田町)に移管する。工場閉鎖の理由は、会社存亡の危機と言える経営状況にほかならない。25年3月期決算では過去3番目に大きい6708億円の最終赤字を計上。値引きしないと売れないブランド力の低下や、国内や北米の工場を減損処理したことが主要因だ。エスピノーサ氏は「グローバルに年間350万台の生産能力があるが、実際にはその7割しか活用できていない。国内の稼働率に至っては6割。九州に移管することで中長期的にはコストが15%下がる」などと説明した。
追浜工場での生産終了を発表する4日前の7月11日には、米ドルとユーロ建ての社債6600億円とユーロ建ての転換社債2000億円の計8600億円を調達すると発表。26年3月期に5800億円の社債償還期限が迫っているため、新たに調達した資金は主にその償還に充てる。借金返済の原資を借金に頼る状況から見ても資金繰りは楽ではない。

そもそも日産が経営危機に直面しているのは、カルロス・ゴーン氏が経営トップに君臨していた頃、インドなどの新興国市場攻略のために大きな設備投資をしたものの、それが裏目となって設備過剰の状態に陥ったことが大きい。一方で開発費は抑制したため、売れるクルマを市場に出せず、主要市場の北米で値引き販売したことで収益性を悪化させた。
だが、ゴーン氏が去ってからも事態は一向に改善しない。19年12月に社長に就任した内田誠氏は抜本的かつ効果的な対策を打てなかった。「ゴーン事件」に懲りた日産はガバナンス改革のために19年6月、取締役会の過半数を社外取締役が占める指名委員会等設置会社に移行したが、うまく機能していない。22年から23年にかけて展開された日産に対するルノーの出資比率引き下げ交渉を巡っては執行部の内田氏側と、当時筆頭社外取締役だった豊田正和氏(元経済産業審議官)が対立するなど社内が一枚岩でないことも構造改革の足枷となった。
その後、日産は生き残りをかけてホンダとの協業交渉に入り、両社は24年8月、電気自動車(EV)などの領域で提携すると発表。同年11月には内田氏が、全社員の7%に当たる9000人の削減などを行うリストラ計画も打ち出した。この頃、EV事業にも進出している台湾電機大手の鴻海精密工業が日産の買収を狙っていることも発覚。鴻海の動きを察知した日産とホンダは交渉のスピードを加速させ、24年12月には共同持ち株会社設立による経営統合計画が発表された。
しかし、25年2月には交渉が破談。「ホンダが日産の進めるリストラ計画が甘いと判断したうえ、内田氏の意思決定が遅いことにホンダが苛立ったことが要因の一つ」と交渉関係者は明かす。たとえば、ホンダ側は日産の人員削減は9000人では足りず、3万人規模が必要と見ていたという。また、鴻海は水面下でホンダにも接触し、「日台自動車連合」を作る構想を働きかけていたようだ。
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