新語・流行語大賞選考委員の一年

やく みつる 漫画家

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 今年も、言葉を渉猟する日々が始まりました。

「新語・流行語大賞」の選考を担当するようになってもう20年以上。毎年、選考会前には事務局から候補リストが提案されますが、そこから漏れている語は選考委員が持ち寄らなければなりません。長いことやっていると、より能動的にかかわりたくなるものです。自分が「これぞ」と思った言葉は、本業のネタを書き溜めるノートにメモするようにしています。毎年漫然と選んでいるわけではなく、結構しっかりやっているんです。

 とはいっても「流行語」は、人の目に付かないところから選考委員が一生懸命に探り出してくるのでは意味がない。放っておいても耳に入ってきます。

 私たちが意図的に集めなくてはいけないのは「新語」の方です。「今後この概念は頻繁に用いられるな」と感じた言葉は、忘れずに拾っていく。

 例えば昨年、ノミネート語30には入りませんでしたが、私が提案したのが「デジタルフォレンジック」。フジテレビ問題のとき、第三者委員会の弁護士がしきりに口にしていた言葉です。電子機器から証拠を見つける技術のことで、専門家には新語でもないでしょう。でも、報道をみた人はその威力を目の当たりにして等しく驚いた。その点で、新語の候補に相応しいと思いました。あとで振り返って「この年あたりから使い始めた語なんだな」と偲ぶことができるわけです。

 思い返せば、初めて選考に参加した2002年、大賞は多摩川に現れたアザラシ「タマちゃん」でした。長い間担当していると、流行語に対する解釈が、少しずつ変化していることに気付きます。

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source : 文藝春秋 2026年3月号

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