「権力勾配」見えにくい傾きもある

2025年のことば⑦

飯間 浩明 『三省堂国語辞典』編集委員
ニュース 教育

いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。

 2025年2月28日、ホワイトハウスで行われたアメリカとウクライナの首脳会談の様子は、とても見ていられないものでした。アメリカ側のトランプ大統領とバンス副大統領が、ゼレンスキー・ウクライナ大統領に対し、代わる代わる「礼を欠いている」「大統領に感謝すべきだ」「君は第3次世界大戦の危険を招いている」などと批判しました。テレビカメラを前にした大口論です。

 国の規模にかかわらず、外交的には大統領同士は対等のはず。副大統領は言うまでもなく格下です。それなのに、一国の大統領に対し、面と向かって「失礼だ」「感謝せよ」と言うことには、一体どういう正当性があるのか。

 ここに「権力勾配」の存在を感じます。社交上や外交上に生じる権力の強さの違いです。対等な立場同士でも、一方が優位にあって、他方を軽く扱うことがあります。実際の地位や肩書と、そこに生じる権力勾配は違うんですね。

飯間浩明氏 ©文藝春秋

「権力勾配」ということばをよく目にするようになったのは2020年代です。「ウィズニュース」(23年11月14日)で水野梓記者は、航空業界のリスクマネジメント用語で以前から「権威勾配」が使われていたと報告します。ただ、古い例を見ると、「権力勾配」も「権威勾配」も、特定の分野だけで使われていたのではありません。少なくとも今日では一般用語と考えていいでしょう。

 権力勾配はさまざまな人間関係の中に生じます。会社の上司と部下はもともと職務上の権限が異なりますが、それ以外の部分でも上司が優位に立ち、部下を服従させようとすることがあります。権力勾配の悪用と言うべきでしょう。

 あるいは、嫌なことばですが、学校内の俗に言う「スクールカースト」。児童・生徒はみんな平等なはずなのに、なぜか優位にあって、ほかの子を従わせたり、軽く扱ったりする子がいる。ここにも見えない権力勾配があります。

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source : ノンフィクション出版 2026年の論点

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