いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
地球環境問題と同じく、場合によってはそれよりも早く不可逆的な危機に陥る可能性があるのが、宇宙環境問題である。スペースデブリ、すなわち宇宙ゴミの問題は、現代の宇宙活動においてもっとも対応が困難な課題のひとつとされている。
人類が宇宙に進出して約70年。地球観測、通信、放送、測位、災害監視、安全保障など、私たちの生活は宇宙技術に深く依存している。そのために人工衛星や打ち上げ用のロケットが用いられているが、使用が終了したそれらの残骸は宇宙空間に放置されたままで、膨大な量のデブリとなっている。2025年現在、大きなデブリは4万個を超え、稼働中の衛星は1万機以上。つまり、軌道上の物体の大半がデブリであり、その数は日々増え続けている。地球周回軌道は、もはや「広大な宇宙」ではなく、混雑した交通網のような様相を呈している。

これらの物体は新幹線の100倍の速度で地球を周回し、ニアミスは1日に数100回。さらに、発生した衝突や爆発によって新たな破片が生まれ、それがさらに衝突を引き起こすという連鎖反応も始まっている。
宇宙活動は今や先進国の一部宇宙機関だけのものではない。アフリカ、南米、東南アジアの国々も衛星を打ち上げ、民間企業の参入も加速している。宇宙は世界中で必要不可欠なインフラとなっているのだ。そんな中、デブリの増大でもし宇宙空間が安全に使えなくなれば、私たちの生活は1950年代に逆戻りするだろう。このままの状態でデブリが増え続ければ、世界のGDPの半分以上が失われるとする意見もある。
衛星は使い捨て 公共財としての宇宙
この問題の原因は「使い捨て文化」にある。自動車や航空機にはもちろん、パソコン等の電化製品の業界ですら保守・修理・廃棄の仕組みがあるが、宇宙にはそれがない。点検や修理はもちろん、リサイクルも除去も行われず、使い捨てが常態とされてきた。新車を購入し、ガソリンがなくなれば乗り捨て、また新車を購入する、というような世界観で運用されてきたのだ。宇宙の持続利用には、軌道上でのサービス――燃料補給、点検、修理、そして使用が終わった衛星の除去など――が不可欠である。
しかし、技術的な困難、経済的なインセンティブの欠如、そして国際的なルールの未整備が、軌道上サービスの普及を阻んできた。宇宙には国境がなく、およそ200カ国がひとつの領域を共有している。公共財としての宇宙をどう管理するかは、極めて難しい課題である。
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