
〇開催趣旨
2025年に開催した「続・経営企画部門の重大責務」では、戦略策定、リソース配分、環境変化への適応など、経営企画部門が担う基本機能を議論しましたが、800名を超える参加者が示した関心からは、戦略を“立てるだけ”から“実行と成果につなげる”への移行が多くの企業で課題となっていることが明らかになりました。2026年を見据える現在、企業は労働力不足の加速(2025年問題)、レガシーシステム刷新の遅れがもたらす事業リスク(2025年の崖)、地政学リスクを背景としたサプライチェーン再編、さらに生成AIの普及による業務モデルそのものの変容といった、戦略・組織・IT・事業を横断する課題に直面しています。例えば、製造業では、部門ごとに点在するデータの統合が進まず、意思決定に必要な情報がタイムリーに得られないケースが増えています。また、非連続な成長を狙う企業では、新規事業開発が属人的に行われ、投資判断が曖昧になり企業価値向上に結びつかないといった悩みも顕在化しています。
これらの課題はすべて、経営企画部門が“戦略の司令塔”としてどこまで機能できるかに直結しており、戦略立案から施策実行、モニタリング、学習・再構築までを一貫して統括する「戦略オーケストレーション機能」への進化が不可欠です。さらに、経営企画部門には、これまで以上に多面的な役割が求められています。経営データを統合しAIを活用することで意思決定を高度化する役割はもちろん、新規事業創出では、技術・顧客・競争環境の変化を見据えた事業ポートフォリオ再編が不可欠となるほか、資本市場の視点を踏まえ、ROICや成長ストーリーを軸に企業価値を向上させる役割も大きくなっています。グループ経営においても、複数事業会社の実績管理や投資判断の基準を統一し、全体最適でガバナンスを効かせる“グループ経営管理の高度化”が、特に大企業を中心に急務となっています。これらは、単なる機能追加ではなく、環境変化が企業に迫っている“構造的な要求”であり、経営企画が進化せざるを得ない必然であると言えます。
本カンファレンス「続々・経営企画部門の重大責務―企業価値向上とグループ最適を牽引する“新たな経営の中枢”への深化」では、経営の中心に位置する戦略統括機能として、経営企画が果たすべき役割を、意思決定の高度化、新規事業創出、企業価値向上、グループ経営管理の高度化といった具体的テーマとともに整理し、戦略・データ・変革・人と文化を統合した“進化の全体像”を提示します。そして、有識者や実践者の講演を通じて、激動の2026年を勝ち残り、未来を切り拓くための経営企画部門の真価と深化の条件を考察した。
■基調講演
経営戦略&ビジネスモデル全史をアップデート
~ビジネス革新、マネジメント変革の要諦~

KIT(金沢工業大学) 虎ノ門大学院
教授
三谷 宏治氏
1964年大阪生まれ、福井で育つ。東京大学理学部物理学科卒業後、BCG、アクセンチュアで19年半、経営コンサルタントとして働く。92年INSEAD MBA修了。2003年から06年までアクセンチュア戦略グループ統括。06年からは子ども・親・教員向けの教育活動に注力。大学教授、著述家、講義・講演者として全国をとびまわり、年間1万人以上と接する。KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院教授の他、早稲田大学ビジネススクール・日本栄養大学客員教授、放課後NPOアフタースクール・NPO法人3keys 理事を務める。永平寺町ふるさと大使。3人娘の父。
経営企画部門の役割とは何だろうか。経営とは企業全体に対する「統治」活動であり、経営戦略とは部門を超えた「共通の目的」である。経営戦略論の流派(学説)にはさまざまあるが、自社にとっての正解などない。でもミンツバーグの言うとおり、一つ選んで磨くしかないのだ。
それらはすべて事業群を統治するための武器だ。そして経営企画は日本独自の経営支援機能。増益企業においては、参謀&新規・中長期テーマの具体的推進役である。情報を分析し、新規事業、ICT推進、経営人材育成などで企画と中長期的な推進を行っている。そして、経営雑務の代行から、直接補佐やプロジェクト型への進化が求められている。
昨年上梓した『経営戦略全史〔完全版〕』には、リスク(パンデミック、戦争)、AI(AlphaGo/ChatGPT)、アダム・グラント(『ORIGINALS』)の項目を。『ビジネスモデル全史〔完全版〕』には、シェアリング(Airbnb、Uber、ラクスル)や、SaaS(Adobe、Microsoft)、AI(ナレッジスケール、ケイパビリティ毀損)をそれぞれ書き加えた(いずれも日経ビジネス人文庫)。本日はその中からAI関連について詳述する。
インターネットやAIは「誰」を幸せにするのだろうか。当初インターネットは、小さき者(個人や小企業)たちにとっての恩恵と思われた。膨大な公開情報に万人がアクセスできるようになったからだ。しかし実際には巨人たち(大企業・組織)が社内の独自ノウハウの囲い込み、によって力をつけることにもなった。
それはこんにちの第3・4世代AIでも同じだ。小さき者たちには高度なAIを万人が無料で利用できる、という力を、巨人たちには社内ナレッジ収集・共有の自動化と自社専用化、というメリットをもたらした。ネットもAIも企業規模が効く恩恵があるため、大企業・組織においては「独自情報の囲い込みによるナレッジスケール競争」が今まさに展開されているのだ。
2015年~17年頃の、第3世代AIによる囲碁ソフトAlphaGoの強さと進化の速さは世界に衝撃を与えた。勝手に爆速で学ぶAIの誕生である。AIには読解力と常識の壁があるとされていたが、22年末からのChatGPTに代表される第4世代AIはその壁をやすやすと打ち破ってみせた。
Transformerと大量学習に支えられたLLM(大規模言語モデル)は読解力と創発性を獲得し、そのヒトにかなり近いレベルにきている。例えば、ChatGPT4o(Omni)はビデオ会話も家庭教師もできる。そして、結構ウソをつく(Hallucination)。今や世界中の企業が「AIを使う」こと社員に強制している。それこそが生産性アップ、企業能力向上のカギだと信じて。
しかしそこには大きな落とし穴がある。AIは従来人間が行ってきた、問いの理解⇒情報収集⇒比較検討⇒メッセージ決め⇒文章化⇒長さ調整⇒回答提出という課題への回答提出の流れのほぼすべてを代替する。AIを使えば使うほど、ヒトはそれらの力を失っていく。ヒト(現生人類)種、存続の危機ではないかという危機感を覚えている。
本当は、AIがまともに答えられない問いは無数にある。例えば、新しくニッチで個別的なことには試行錯誤が必須だ。冒頭に述べた経営企画の役割のまとめに加えて、以下を強調しておきたい。現代は、AI活用とAI超えの力を持つ人材育成戦争である!独自ナレッジをどれだけ創造し囲い込めるかの勝負(ナレッジスケール競争)なのだ。しかしAIを漫然と社員に使わせればヒトは調べも考えもしなくなる。
アダム・グラントが著した『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』は、彼の教授・投資家としての大失敗談から始まり、従来の数々の起業における常識を否定する。成功するのは一番手より二番手、専任より副業、自信家のリスクテイカーより慎重な臆病者……副業的にやるからこそクリエイティブになれる。なぜならダメな案を捨てられる・変えられるから、と述べている。
AIに勝てる人材を育てるためには、グラントの著書(『Think Again』等)を読むもよし。もしくは、私が教鞭を執るKIT虎ノ門大学院に将来の経営(支援)人材を送り込むもよし。目先の効率化に走らず、新たなリスキリングへの道を歩んでいただければ幸いだ。

■課題解決講演(1)
AIを経営の"参謀"へ。
意思決定を高速化する次世代の経営戦略

株式会社ログラス
執行役員 CPO
斉藤 知明氏
東京大学在学時にAI研究に従事、動画像を対象としたDeepLearningの研究でICME2016に論文が採択される。在学中同時に英単語アプリmikanを共同創業し、CTOとして従事。その後Fringe81(株)(現Unipos)に入社、ピアボーナスサービスUniposを立ち上げ子会社化、代表に就任、グロースさせたのち親会社と合併。2023年5月より(株)ログラスに参画 プロダクト責任者を経て、新規事業開発管掌執行役員に就任し、新規プロダクト、AI/LLMなどを中心とした新規事業開発に従事、執行役員CPOを現任。
日本企業の生成AIサービスの導入は、米国や豪州にくらべるとまだ及び腰だ。ただし、経営企画部門は過半数が生成AIを日常業務に活用している、という調査結果がある。特にリサーチ業務やレポーティング業務が中心だ。
AI活用が進む一方で、データ活用によって本格的に経営判断を改善できている企業はまだ少ない。生成AIが得意なのは、即時性・網羅性。一方、正確性・再現性は不得意だ。経営にAIを活用するには、正確性・再現性を補助するためのワークフローや数理モデルとの接合が不可欠である。
“本当に使える”クラウド経営管理システム(Saas)が“Loglass”。私たちが考えているAIエージェントの構造(全体像)は下記スライド参照。※「Agentによる自律的な社内情報収集」動画あり

Loglassが予実分析を行い、月次報告資料と分析コメントを自動生成する。また、予兆(機会・リスク)の一覧化や、楽観・中立・悲観シナリオでの見込み生成、中立シナリオにて見込み数値の自動更新、プロンプトで見込み調整、Forecast AIとの協業、シナリオの同時更新、情報提供AIが月次業績会議をPodcast化し配信、IR部門からの質問を高い精度で分析し回答、全社横断でマーケティングキャンペーンのROIを比較……といったことが可能だ。
分析・意思決定時の「企業独自の癖」や「ナレッジ」、財務関連データ、Web上の情報などあらゆる情報を検索し、経営判断に役立つ情報を提供するFP&A AIが経営のあり方を根本から変革する。
現在流行しているChatGPTやGeminiは、人がプロンプトを投げかけ、AIから回答をもらう「プロンプトエンジニアリング」になっている。目指すべきは、人がプロンプトを投げかけなくても、まるで自分の分身や秘書のようにAIが能動的に人に情報を投げかけてくれ、人が判断を導き出すもの。これが「コンテキストエンジニアリング」であり、AI活用の目指すべき活用だ。

Loglassは、アナログ運用の多い経営管理領域のデータを一元化する。予算策定-予実管理-見込更新-管理会計のフローを効率的に仕組み化し、柔軟に“次の一手”を打ち出せる機動力を届ける。収集(煩雑な“作業”を最小工数で)⇒統合・加工(データ加工はワンクリック)⇒分析(経営会議の室をアップデート)という流れだ。
・生成AIが台頭し、これから経営はAIと共生するように変わっていく
・人間が意思を持って意思決定するために、AIが自発的に正しくリスクやチャンスを予期してくれるようになっていく。
データを一元化し、AIに与えていこう。AIがあらゆる示唆を出してくれる時代になる。
■特別講演(1)
レゾナックの価値創造を実現する、
“戦略的インテリジェンス”と“経営の意志”
~進むべき道を示し、社内外の共創を“成果”へ繋げる、経営企画部門の真価~

株式会社レゾナック・ホールディングス
取締役 最高戦略責任者/最高リスク管理責任者
真岡 朋光氏
東京大学大学院工学系研究科修了。A.T. カーニーに入社。その後、インフィニオンテクノロジーズ、レノボ・ジャパンを経て、ルネサスエレクトロニクスで執行役員として、経営企画や中国事業統括等に携わる。2021年10月に昭和電工(現・レゾナック・ホールディングス)へ入社し、22年3月より取締役最高戦略責任者(CSO)に就任。23年1月よりレゾナック・ホールディングス 取締役最高戦略責任者(CSO)。24年1月より現職。
大前提としてまずこちらを伝える。経営企画に「定型」はない。百社百様の「特注品」であり、企業文脈と経営者の狭間で決まるものだ。今日は1社のリアルを紹介する。その中から自社にとってのエッセンスを抽出するのは皆さまだ。
弊社は昭和電工と日立化成が2023年に統合して誕生した、世界トップクラスの半導体後工程材料メーカーである。事業特性に応じた集中と最適化を推進しており、企業価値最大化を目指すポートフォリオ改革を実行している。また、ROIC10%に向けた資本政策を推進しており、成長投資と株主還元を両立し、持続的な価値創出の実現を意識している。
ポートフォリオ改革については、2021年以降18件の事業売却(予定含む)を行っており、かなりのスピード感をもって進めている。判断軸は、「戦略適合性」「採算性と資本効率」「ベストオーナー」の3つ。今後も、事業ポートフォリオの継続的見直しと必要に応じた入れ替えを行い、成長基盤をさらに強化していく。
弊社は企業価値向上=戦略(ポートフォリオ改革)×個の能力×組織文化、と考えている。短期的な経営課題はCFO/CSO体制で判断し、より本質的長期課題をCEO/CHROが推進するチーム経営を行っている。CSO/CROである私が主に管掌しているのは、(1)経営アジェンダ運用高度化 (2)外部環境リスクマネジメント(シナリオプランニング・渉外機能強化) (3)グループマネジメント体制の強化、だ。
経営企画部門に求められるものとは何だろうか。私は「すき間」と「重なり」に着目している。当社を取り巻く環境から、事業は様々な影響を受ける。その中で、どの事業も触れていない「すき間」、複数の事業で触れそうな「重なり」にある機会や課題、ブラインドスポットを見極め、コーポレートとしての打ち手を考える視点を大切にしている。

外部環境リスクマネジメントでは、CXO組織主導トップダウン型と事業部門主導ボトムアップ型の両面からの視点の融合を行い、経営幹部による議論から経営アジェンダへと落とし込み、可視化している。社内外から得たインテリジェンスを分析、加工し戦略に生かし、同時に積極的な情報発信も行っている。また、リスクシナリオをBCP(事業継続計画)トレーニングに落とし込んで、経営者の意思決定訓練の一環として展開している。グループマネジメントでは、“グループ会社早期警戒体制会議”を設け、様々な指標を基にグループ会社の「本当の状況」を早期に察知する取り組みも行っている。
最後に経営企画として意識していることをまとめる。
・経営企画の定義:経営企画に定型はなく、企業文脈と経営者の狭間で決まる百社百様の「特注品」
・「すき間」と「重なり」への着目:市場や技術などの外部環境と、自社経営資源や戦略適合性を俯瞰し、既存事業の盲点に着目する
・戦略的インテリジェンスの実践:社内外から収集した情報を分析・加工して「経営アジェンダ」へと昇華させ可視化する
・戦略の「意味づけ」:現在の事業を基に、市場認識や外部環境変化をつなぎ、説得力のある戦略ストーリーへと再構築する
・「経営の意思」の具現化:事業特性に応じた選択と集中、成長投資に重きを置いた資本政策など、明確な優先順位付けを行い徹底する
・シナリオ作成から意思決定訓練へ:外部環境変化をシナリオ化し、単なる予測にとどまらず、経営としての行動へ落とし込む
■課題解決講演(2)
市場と対話する「新たな経営の中枢」へ
~投資家視点を組み込み、持続的成長ストーリーを確固たる数値根拠で証明~

株式会社アバントグループ
CSO兼 株式会社アバント 取締役
諸井 伸吾氏
コンサルファーム、ファンド、事業会社での経営企画や事業本部長、COOを経験し、2022年4月より企業経営に役立つ情報システムを探求し続けてきたアバントグループに参画。現在はグループCSO(戦略担当)、IR室長、経営管理ソリューションを担うアバント社取締役、IRコンサルティングを担うVISTA社取締役として戦略実現に取り組む。
市場は、企業が将来CF(キャッシュフロー)をどう生み続けるかを見ている。過去の利益を見ているわけではない。市場の問いは、(1)何が成長を牽引するのか (2)資本をどこに投下するのか (3)失敗を止められるのか、そしてこの3つが一本でつながっているかを見ている。
多くの企業では、3つが分断している。成長ドライバーは定めているがあいまい(勝ち筋が見えていない)/投資はキャピタルアロケーションを枠で示しても勝ち筋の実現まで見えない/規律はあるが止める規律中心で成長のフェーズに応じた再配分にまで使われない、といった結果、構造として示せないことが多いのだ。
◎成長ストーリーを証明する構造
成長の牽引力は「成長ドライバー+勝ち筋」で定義する。ドライバーは成長の因果関係を示す/勝ち筋は実行可能な具体策である/価格、数量、継続率などのレバーへ分解する/誰がいつまでに検証するかを定める/曖昧な成長期待を論理構造へ変換する、のだ。
勝ち筋を投資テーマとKPIへ一本の線で直結させたい。勝ち筋を実行仮説として設定/仮説を具体的な投資テーマへ落とし込む/成否を測る検証KPIを厳格に定義/部門の指標ではなく価値創造の指標を追う/現場の行動と全社の成長をロジックで繋ぐ。
資本は「勝ち筋のフェーズ」に投下する。探索枠は小さく張り素早く検証/拡張枠は勝ち筋が見えた段階で増額/維持枠はROIで検証しキャッシュを創出/事業のフェーズに応じて資本を割り当て/一律の投資基準という悪弊を捨てる。
規律とは抑制ではなく、学習と再配分である。投資テーマごとに判断期限を設ける/検証KPIに基づき継続か撤退かを判断/回収した資本を継ぎの成長枠へ再分配/この循環が資本効率を継続的に引き上げる/撤退なきポートフォリオは腐敗する。
3つの軸が連動し、再現可能な証明構造となる。この構造を“お金の流れ”に落とす。牽引力を定義し、資本を最適配置/規律をもって撤退と再半分を断行/このサイクルが将来CFの源泉となる/市場への説明、数字による証明へ変わる。
戦略を“お金の動き”と“資本効率”で証明するのだ。中計の戦略と単年度予算を直結させ⇒予算は投資テーマへの配分枠として機能させる/慣性による前年踏襲型の予算配分を達⇒投資案件の期待効果を明確にし、資本効率への影響も示す。資本配分が将来のROIC向上につながることを証明する、つまり投資額・検証KPI・期待ROICの3点を明示するのである。
◎経営企画はどう変わるのか
経営企画部門は価値創造構造の設計者へ。ドライバー、勝ち筋定義者としてKPI体系設計権を持ち、成長の論理を事業部に丸投げしない/全社の戦略をドライバーと勝ち筋へ分解/経営と現場をつなぐKPI体系を設計/論理の整合性を担保する見解を持つ、ことだ。
また、投資のハードルと撤退ラインを握り(権限=投資ゲートと撤退ラインの設計権)、設計を定常的なプロセスとして会議体に埋め込む(権限=月次・四半期・通期の進行管理権)。
完璧なモデルはない。弊社グループでも自ら経営のあるべき姿を探求し続けている。
・成長事業、成長ドライバーの特定はしたが、勝ち筋の解像度が低く、仮説検証を繰り返す(勝ち筋発見が一番の難所)
・キャピタルアロケーションを枠で示しても、検証、再投資のアロケーション、段取りまで落とし込まれていないため、結果として投資の実行がなかなか進まない
・攻めと守りの規律がそれぞれの役割を意識した形で整備されておらず、ひとくくりの“規律”として設定されることで攻めと守りの両面で足かせとなる
現在、探索枠の明確化と検証方法の設定に取り組んでいる。
まとめ。
(1) ドライバーは“勝ち筋”まで分解する
(2) 資本は事業ではなく“勝ち筋フェーズ”に張る
(3) 規律は止める力ではなく、再配分の力である
この3つを「一本の構造」として回せるかが、市場との対話を決める。
弊社が提供するソリューションは以下のスライド参照。

アバントは、構造を設計し、試し、検証し、再配分する変革プロセスに伴走する。
■課題解決講演(3)
経営戦略としてのAI活用:
生成AIの回答精度と業務適合性を高めるビジネス文書の『知的資産化』戦略

オープンテキスト株式会社
ソリューションコンサルティング統括本部
コンテンツ&エクスペリエンス本部 本部長
秋山 英二氏
2020年1月、オープンテキスト(株)入社。ソリューションコンサルティング統括本部・ディレクターとして、文書管理・ウェブコンテンツ管理分野のソフトウェア製品の事業推進に従事。IT業界で30年の経験を持ち、メディア配信、ウェブ高速化、モバイルセキュリティ等、多様な先端技術のビジネス開発に従事。
ゴールを示せば自律的に考え行動するエージェント型AIは遠い未来ではなく、企業の競争力を左右する「次の波」だ。先行企業はすでに実装フェーズに突入している。カスタマーサポート、ソフトウェア開発、マーケティングなどに導入されているが、今後は営業・事業開発やバックオフィス、研究開発(R&D)分野でも導入が進むだろう。
AIはデータで動く。“Garbage In, Garbage Out”(ゴミを入れればゴミが出てくる)という言葉があるように、与えられる情報が不正確だったり関連性が低いと、AIは答えを間違える。多くの企業がERPやCRMの「構造化データ=結果」のみに注目している。しかしそれらだけでは背景や理由が見えない。
ビジネスの意思決定の背景や理由は「ビジネス文書(非構造化データ)」の中に存在する。しかし、ファイルが深い階層に散在し、ファイルの「どの商談に関連するか、誰が担当か」という文脈情報が欠如しているのが現実。必要な正しい情報が得られず、AIの不正確な回答やハルシネーションを誘因している。
先述のようにERP/CRMなどの業務システムは「結果」としてのデータしか持っていない。結果は正確に記録されるが、そこに至る背景や理由を把握できない。エージェント型AIが高度な業務を行うには、過去の経緯や類似事例、つまり「背景・理由」が記載されたビジネス文書へのアクセスが不可欠だ。
そして最大の壁が「セキュリティと権限」。AI活用において企業が最も懸念する課題がセキュリティである。全データ学習への不安/機密情報の混在/権限制御の未連携、が課題としてある。
◎エージェント型AI活用の真実
今現在、生成AIを使えていないなら、未来も厳しい。現在の生成AI活用におけるデータ基盤やガバナンスの課題を解決することは、エージェント型AI導入の強固な基盤となる。エージェント型AIを支える3つの構成要素はLarge Language Model(LLM):脳/Knowledge Graph:情報の地図/Guardrails:安全装置、だ。これら3つが揃って初めて、ビジネスに使えるエージェント型AIが実現する。
本講では、人間の脳のように記憶(データ)が総合に繋がっている状態=ナレッジグラフを詳述する。情報をフォルダの場所ではなく「意味のつながり(関係性)」で管理する構造だ。従来の階層型とは異なり、例えば、顧客⇒契約⇒製品⇒製品マニュアル、とAIが文脈を辿ることができる。
ナレッジグラフを実現する“OpenText”によるソリューションについて。解決策(1)はAIの回答制度を高める「ワークスペース」を作ることだ。ビジネス文脈に基づく情報を凝縮し、ノイズを物理的に排除し、AIの回答制度を向上させる。
解決策(2)は文脈を広げる「関連付け」。単独のワークスペースだけでなく、関連するワークスペース同士を相互にリンク。AIは「関連性の高い情報」という質を保ったまま、探索範囲を広範囲に拡張可能となる。単なるキーワード検索ではなく、「意味のつながり」を芋づる式に辿ることで、正確な回答を実現。エージェント型AI活用に欠かせないナレッジグラフ構築の土台となる。
解決策(3)は、業務システムとの連携だ。OpenTextは、SAP S/4、Salesforce、SuccessFactorsとの連携を標準サポート。全社データとの自動同期、シームレスな統合を実現する。データの手動メンテナンスは不要だ。そして、現在の生成AI活用もOpenText導入で劇的に進化する。権限連動型AIなので、安心して全社展開できる。
※「経営委員会へ全社的ITプロジェクトの遅延報告:経営企画部門に客観的視点で調査の指示」の、デモンストレーション画像あり
OpenText導入投資は、未来への備えであると同時に「現在の生成AI活用の高度化」でもある。今の業務を効率化する短期的な成果と、来るべきエージェント型AI時代への準備という中長期的な資産形成を同時に実現する。これこそが最もROI(投資対効果)の高いデータ戦略である。段階的な導入ステップを推奨する。

■特別講演(2)
SOMPOホールディングス、
"日本発の真のグローバルカンパニー”を目指して
~ 企業価値向上に向けて求められる、攻めと守りの経営企画部門 ~

SOMPOホールディングス株式会社
執行役員 経営企画部長
広瀬 杏太郎氏
2002年、日本興亜損害保険(現損保ジャパン)に入社。国内損害保険営業(個人・企業分野)を約9年経験後、海外子会社管理、海外M&A、海外グループ会社への出向など、海外保険事業の幅広い分野に携わる。24年よりSOMPOホールディングス事業分析室長としてFP&A機能強化を推進。現在は執行役員兼経営企画部長として、グループ全体の経営資源配分・FP&A・ガバナンス体制構築を通じた企業価値向上を担う。
“安心・安全・健康”であふれる未来へ、が弊社のパーパス。国内・海外の損害保険とウェルビーイング(生保・介護など)の2事業を柱に、2030年度の修正連結利益は2024年度比倍増水準以上を目指している。
保険のビジネスモデルは、自由化、テクノロジーの普及、人口反転(オーナス)という3つの大きな変化が起こる前に形成されたもの。その従来モデルとマインドを継続し、環境変化への適応が後手に回っていた事実はある。また、昨今は自然災害の規模と頻度が増大し、地政学リスクも発生。金融政策・インフレの波などの外部環境の変化も起きている。
◎FP&A機能の強化
そんな中取り組んでいるのがFP&A機能の強化だ。財務データ・業績データの分析、予算策定、将来の予測を行う/財務・管理会計の知識を駆使し、データに基づいた経営アドバイスを行う/企業戦略の策定や意思決定をサポートする、といった役割を担う。
FP&Aによる企業価値向上への貢献としては、戦略と実行の高度な連携/データに基づく意思決定の質向上/リスクと機会の早期発見/ステークホルダーとの対話促進などが挙げられる。経営がFP&Aに期待するのは未来の価値創造を支える役割。未来志向の洞察/「腹落ち」させるデータ・ストーリーテリング/主体的な課題発見と提案、などが進化のための要件だ。
FP&A人材に求められるコンピテンシーは、会計・財務の専門知識/IT・データ分析スキル/ビジネスへの深い理解/コミュニケーションと語学力、である。FP&A機能を発揮するには、会計データの最大限の活用が必須だ。弊社は現在、グループCFOが経営企画と経理を管掌する体制で強いリーダーシップを発揮している。
弊社は海外保険事業を大型買収(2017年、Endurance社、現Sompo International社)によって拡大した。同社が有していたFP&A機能をグループ内のセンターオブエクセレンスとして横展開している。具体的には、クラウドベースのFP&Aシステムの導入および活用方法の移植、日本からトレーニーを派遣し先進的なFP&Aプラクティスを吸収、などだ。
人材育成・専門性の向上にも留意し、ジョブ型人事制度を活用してFP&A人材として専門性を向上させる取り組みもしている。事業を理解する内部人材を育成してファイナンスの知識を習得することと、ファイナンスの知識・FP&A業務経験を持つ外部人材を採用して事業への理解を深めてもらうこと。この二つのルートをバランス良く活用することで、人材プールの底上げを図っている。
◎新規事業の創造/グループ経営体制の変革
パーパス実現のための新事業開発も行っている。単なる多角化ではなく、社会課題解決に資する事業ポートフォリオを意図的に創造していく。
Aspen社の買収、世界最高峰の保険市場「ロイズ」等への事業拡大により、あらゆる危機から顧客を守り抜く強靱な経営基盤作りに努めている。また、(株)鎌倉新書との資本業務提携により、介護の先にある終活の不安まで寄り添い、家族の絆を未来へつなぐ。また、(株)農業総合研究所も傘下に収め、安心・安全・健康の源流へ。生産者と食卓をつなぎ、日本の食と農の持続可能な未来を耕す。
グループ経営体制は、ビジネス領域を「SOMPO P&C」と「SOMPOウェルビーイング」に集約し、各ビジネス領域を統括するビジネスCEOを新設した。持ち株会社はコストセンターであることを自覚し、リーンな 持ち株会社にしかできない機能に集中している。
◎経営企画部の目指す姿
欧米企業では、経営企画部に直接該当する組織は存在しないケースが多数だ。「誰かが決めたようで、誰も最終責任者ではない」。経営企画部は、この状態を意図的に創り出すための“緩衝材”として機能してきた側面がある。機能が分散された欧米型が標準ならば、日本の経営企画部は不要な組織なのか? 私は、そうは思わない。
かつては調整機関、取りまとめ役であったが、これからの経営企画部の使命は専門性を核とした価値創造だ。高度な専門性と価値創造/多様な専門性を持つプロフェッショナル/質の高い経営意思決定の支援、がキーワードである。

欧米型の強み=高度な専門性と明確な責任と、日本型の強み=全体最適と組織の求心力の究極のハイブリッド、専門知の「有機的結合」でありたい。分散とサイロ化を防ぎつつ、最高レベルの専門性を経営の意思決定に直結させるハブとなるのである。
経営企画部門での仕事は、ジュニアクラスにとっては会社全体を俯瞰する視点が身につき、経営判断プロセスを学べる。ミドルクラスは部分最適と全体最適を考える経験や課題設定力が磨かれる。シニアクラスは重要な経営判断に関与できる。皆さんと一緒に経営企画部門から日本企業に活力を!
2026年3月17日(火) 会場対面・オンラインLIVE配信でのハイブリッド開催
source : 文藝春秋

