10年前は総務部長として、今回は知事として地震に直面
7月28日、16時27分。熊本南部を最大震度7の揺れが襲った。約1時間半後にはイオンモール熊本で爆発事故が起きるなど、二次災害も多数発生した。死者は38人を数えている(8月27日時点)。
2016年4月にも巨大地震(平成28年熊本地震)に見舞われた熊本。当時、総務省から赴任し、県の総務部長を務めていたのが、木村敬・現熊本県知事(52)だ。今回の地震から3週間が経った8月中旬、知事が語った。
7月28日の地震が起きた時間、私は雲の上にいました。台湾の台中から熊本へ、飛行機で戻っている最中だったんです。
前日は、台北で「台湾・熊本経済共創フォーラム」に参加していました。TSMC(台湾積体電路製造)の熊本工場が稼働を始めたのは一昨年ですが、以来、台湾と熊本の間で、経済や観光、人的交流が活発になっています。私も現地に進出している熊本の企業や、熊本出身で料理店を営む方々と懇談しました。台北から台中に向かったのは、今年3月末よりスターラックス航空の台中―熊本便が飛ぶようになったからです。
日本時間の16時に離陸し、その30分後、機内Wi―Fiを通じて「熊本で震度7」という一報が入りました。
「7か──」
その数字に慄然としました。
10年前、私は熊本市で4月14日の前震(震度6弱)、16日の本震(震度6強)を経験しています。それをさらに上回る揺れが、また熊本を襲ったというのか……。
震源に近いのは八代市方面。10年前には大きな被害を受けなかった地域です。タブレットで断片的な情報を追いながら、まず副知事に、震源が近かった自治体の首長たちと連絡を取るよう指示しました。並行して、自衛隊の応援派遣要請の準備もするよう言いました。
18時過ぎだったか、イオンモール熊本(上益城郡嘉島町)で爆発が起きたという情報が入りました。私も休日に妻とよく訪れる、熊本で最も大きな規模の商業施設ですから、いっそうの衝撃でした。
オンライン災害対策本部会議
私の乗った飛行機が熊本空港に着陸できず、福岡空港へ降り立ったのは19時半頃。県内全体でどれほどの被害が出ているか、初めて把握したのは、熊本への車中でオンライン参加した第1回の災害対策本部会議でした。

映像を見ながら職員と話し、次々に指示を出すことができましたが、これは10年前には考えられなかったこと。通信環境の充実により、飛行機の中でも、移動中の車内でも状況を知ることができたのは、初動で冷静な判断をするうえで極めて大きかったと思います。
21時半に県庁へ到着してすぐ、被害の概要を聞き、対応を練り始めました。深夜0時に第2回の対策本部会議。いったん帰宅したのは……午前2時くらいだったでしょうか。妻とは機内でメールのやり取りをして「大丈夫」とのことだったので、そこは安心していました。
知事が繰り返し口にするのは「初動」と「連携」の重要性だ。
10年前の経験から、初動がいかに大事かは身に染みてわかっています。そして、政府や他自治体などとの連携体制をいかに早く作るかが肝要ということも同様です。
震度7で、相当数の家屋が壊れ、余震が続いている。そこで夜のうちに準備し、翌朝には県から被災自治体へ職員を派遣することを決めました。そうすることで首長や市町村職員を直接支えることができます。
政府には、現地対策本部を置いてほしいと木原(稔)官房長官にお伝えしました。すると翌々日の7月30日には東京から応援職員が入り、県と国が直接顔を突き合わせ、課題を抽出できるようになりました。
「対口支援」の仕組み
さらに、県外からの応援職員を受け入れるため、受援側の態勢を整えていきました。
前回の地震の2年後、総務省の「対口(たいこう)支援」の仕組みができました。これは大規模な災害が発生した際、被災した自治体と支援する側の自治体を組み合わせて、初動対応から復旧・復興までを継続的かつ組織的に支えるという仕組みです。たとえば八代市のメインとなる対口支援団体は、大分県を派遣統括団体として他14団体です。
いま、被災した市町村には、全国から900人ほどの応援職員が入っています。避難所の運営や、家屋被害の罹災証明などの作業を回していくには多くの人が必要。また、その中にはどこへ誰を配置するかを差配する総括責任者や、応援職員を支えるチームもいます。私は「前回の倍のスピードで」あるいは「10年前より1日も早く」と言っていますが、実際に、その感覚でここまで進めてくることができたと思っています。
職員にも10年前を経験した者が多くいます。2度目の地震が来たことは極めて残念であり、私自身「またか……」とガックリしたのは事実。災害など経験しないに越したことはありませんが、しかし経験は確実に生かされています。
一方で、地震発生直後には、体育館で毛布を敷いて雑魚寝、といった、過去の災害時と変わらない光景がテレビ報道によって伝えられた。
普段から、災害が起きた際、地域のコミュニティセンターなどの避難所に来るのは10人程度、という想定で備蓄などをしています。今回のような大規模災害に必要な物資を、すべての避難所で常に用意しておくのは、備蓄スペースの問題もあり、現実的には難しい。ですから地震発災直後は、そのような状況にならざるを得ないのです。
ただし今回、その状況をできるだけ早くに改善し、段ボールベッドやパーテーションが入り始めたことは、大きな前進といえます。1年前から、(上益城郡)益城町にある消防学校に、国の分散備蓄物資拠点が整備されていました。今後は、最初の3日以内、できれば48時間で、避難所環境をどこまで向上させられるか、追求していきます。
国からクーラー約300台
前回の地震とのもっとも大きな違いは、発生した季節でしょう。前回は4月。今回は7月。
年額プランがおトク!月あたり900円で全記事読み放題
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
オススメ!
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2026年10月号

