
〇開催趣旨
激変する経営環境の中で、経理財務部門は「正確に計数を扱う管理部門」から、経営の意思決定を支える参謀としての役割が求められる局面を迎えています。AI・デジタル技術の進展は業務効率化を大きく後押しし、従来型の定型処理や帳票作成から解放される一方で、リアルタイムの情報提供、KPIに基づく経営管理の高度化、データ分析を基盤とした事業戦略提案といった付加価値創出が不可欠となりました。
経理財務部門はFP&A機能への移行を視野に入れ、シナリオ分析や経営戦略支援、事業部との横断連携による意思決定精度の向上、適切なガバナンス維持を両立する新たな役割への進化が急務です。その実現に向けては、AI活用スキル、データリテラシー、コミュニケーション力などの高度専門人材の育成と、組織能力全体の底上げが鍵となります。
本カンファレンスでは、経理財務部門が持つ潜在力を最大化し、効率化のその先にある“価値創出”へと舵を切るための最新知見、実践アプローチ、変革のヒントを提示し、企業競争力の源泉として進化を続ける財務機能の「重大責務」と未来像を考察した。
■基調講演
CFO目線での三位一体経営:資本コスト、人的資本、パーパス

慶應義塾大学総合政策学部
教授
保田 隆明氏
リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券で投資銀行業務に従事した後に、SNS運営会社を起業。同社売却後、ベンチャーキャピタル、金融庁金融研究センター、小樽商科大学大学院准教授、昭和女子大学准教授、神戸大学大学院経営学研究科准教授および教授を経て、2022年4月から現職。19年8月より21年3月までスタンフォード大学客員研究員としてアメリカシリコンバレーに滞在し、ESGを通じた企業変革について研究。複数社の上場企業の社外取締役および監査役も兼任。博士(商学)早稲田大学。1974年兵庫県生まれ。
本日のキーワードは「資本コスト経営」「人的資本経営」「パーパス経営」の3つ。企業の目的は、収益最大化と社会インパクトの両立だ(前者は株価による評価、後者はESG、インパクト投資家目線)。それらが実現可能な組織づくりこそ、人的資本経営である。事業ポートフォリオ変革、経営革新を可能たらしめるには、パーパスの浸透と人的資本経営との連動が重要になる。
ROE(自己資本利益率)が高いと株価評価は高い。市場で評価される日本企業はROE8~10%を目指す。ただ、国際的に見ると日本企業のROEはまだ低い。問題は利益率の低さ(P/Lマター)である。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)を取り入れ、事業ポートフォリオの入れ変えによりサステナブルな経営を実現したい。昨今、人的資本経営の文脈で言われるリスキリングとは、資金収穫に寄与する“金のなる木事業”をより効率的に回すことではなく、投資案件である“問題児事業”と維持案件である“花形事業”を開発できる人材を育てることのはずだ。
デジタル化(DX)、AI、グリーントランスフォーメーション(GX)、サステナビリティ(ESG)、グローバル化……事業転換を果たし企業価値を実現する事例を、日本全体で積み上げていく必要がある。製造業メインの日本(時価総額の約半分)が参考にすべきは、必ずしも米国(マグニフィセント7)ではない。
著書『SDGs時代を勝ち抜くESG財務戦略』(ダイヤモンド社)ではシスメックスなどの転換事例をいくつか説明した。本日はまず日立の事例を紹介する。同社は12年間、売上はほぼ横ばいの10兆円程度だが、先述の事業ポートフォリオの見直しにより、営業利益率はコロナ禍を除けば右肩上がりで改善している。
売上30%相当の事業を入れ替え、連結上場会社(2006年に22社あった)を、22年度にはゼロにした。注力分野を、データを活用する社会イノベーション事業と定めて集中投資したのだ。それと同時に人材施策(ミッション、ビジョン含む)の最適化を行い、23年4月の株価は16年4月の3.2倍になった(同時期の日経平均は1.7倍)。
投資家が求めていることは企業価値最大化だ。フリーキャッシュフローの最大化と、資本コストの最適化(最小化)を追求したい。例えば、花王は資本コスト経営のお手本のような企業。しかしアクティビストファンドにより、同業他社に比べ成長率/営業利益率/ROICが低い、研究開発費が利益に結びついていない、宣伝広告費が過小、という批判を受けた。
指摘はある程度的を射ている。しかし、花王は基礎研究に基づく確かな商品を作ろうとする企業であり、基礎研究は成果が出るまで時間がかかる。花王は収益と社会価値(サステナ、CSV=共通価値の創造)の両立を追求する会社だが、短期の業績が伴わないと企業の戦略や思想は株式市場では地味で面白みがないものに映る。京セラに対しても同様の指摘がある。
社会価値(サステナ、CSV)の実現では、市場の時間軸と企業の時間軸がずれている可能性がある。社内外にパーパスを含むナラティブを浸透させ、ステークホルダーの支持を獲得したい。花王、京セラならかつての神通力(ブランド価値)を挽回可能と考える。
アクティビストファンドにはプレイブック(基本ルール)がある。例えば、人件費や研究開発費をかけてもTDKや無印良品は市場から支持を得た。資本コスト経営、人的資本経営、パーパス経営のすべてがうまくリンクして企業価値向上となった事例だ。
TDKのパーパスは「創造によって文化、産業に貢献する」。エンジニアがやりたい研究を自主的にするヤミ研究文化や、役職に上下はあるが機能の上下はなく意見は平等に扱われる“機能対等”という企業文化がある。同社はこの文化と、原点である磁性技術をもとに研究開発費をかけ、技術領域を広げた。
日立同様に買収と売却を行い、社会的変化に合わせ事業・知財ポートフォリオも変革した。今やグループの大半の従業員はM&Aでグループ入りした企業群に属している。独創の精神(ベンチャースピリット)×継続的な技術の進化(人的資本)・機能対等の文化×先手の事業入れ替え(資本コスト経営)=企業価値向上を果たしたのだ。無価値となってから撤退したオーディオテープの失敗事例に学び、受動部品(SAWデバイス)事業は価値を高めてから撤退した。
うまい経営にはナラティブの一貫性がある。AI導入、DX推進は重要。その一方、それら自体が目的化する事例も散見される。ナラティブに合致するAI導入、DX推進が重要だ。まず、ナラティブが魅力的かどうかの再確認が必要(統合報告書は物語なのか説明書なのか。説明書は誰も読まない)。
資本コスト経営、人的資本経営の本質を以下にまとめる。

無印良品を展開する良品計画は、2023年まで数年間株価が低迷していた。20年にハーバードビジネススクールによる同社のケーススタディ・レポートが出たが、同時期に経営改革を行ったことで、業績・株価ともその後急伸した。具体的にはパーパスの見直し/パーパス(世界観)に合うように価格体系を見直し、パーパスを体現するエントリー商材の開発/顧客との接点(店舗)で世界観を体現/エントリー商材から商品群への買いまわり促進、といった施策を行った。
ROA、営業利益率は回復基調にあり、原価率は改善した。販管費コントロールが次の課題と見ている。同社は意図的に人件費増と店舗投資を行っており、OMO戦略においても顧客を店頭に誘致(例・ネットストア利用の際も配送料ゼロで店舗受取に誘導)し、顧客接点を設計・価値観を共有するようにしている。
値上げによる客数の減少はスキンケアなどの新商品で回復。牽引商品はハウスウェア(日用消耗品)、ヘルス&ビューティー=無印良品の世界観を最も訴えやすいカテゴリー群、となっている。同社は「使うことで社会をよくする商品を手に取りやすい価格で提供する」「店舗は各地域のコミュニティセンターとしての役割を持つ」を使命として挙げている。
他社への示唆をまとめる。パーパス由来の自社のコアコンピタンスを認識し、それと矛盾のない乗せた商品やサービスを時代適合した市場・分野に展開することが企業価値向上につながる。パーパスを含む経営戦略、組織戦略を社内外にわかりやすく伝えて業績につなげる。
(1) 資本コストを上回る事業リターンの実現(ROIC経営を事業部でも認識)
(2) パーパス・世界観を内外に浸透させる
(3) (1)と(2)が達成できる組織づくりが人的資本経営
事業戦略・人的資本経営・広報IRの三位一体経営ができれば、業績面で残っている改善点は今後の伸びしろとして株式市場に認識させられる(IR戦略)。
■課題解決講演(1)
経理業務に生成AIをどう使う?
マネーフォワードが語る組織変革とAI実践事例とは

株式会社マネーフォワード
執行役員 グループCAO(Chief Accounting Officer) 公認会計士
松岡 俊氏
1998年ソニー(株)入社。各種会計業務に従事し、決算早期化、基幹システム、新会計基準対応PJ等に携わる。英国において約5年間にわたる海外勤務経験をもつ。2019年4月より当社参画。『マネーフォワード クラウド』を活用した「月次決算早期化プロジェクト」を立ち上げや、コロナ禍の「完全リモートワークでの決算」など、各種業務改善を実行。中小企業診断士、税理士、ITストラテジスト及び公認会計士試験(2020年登録)に合格。
この約30年間、会計基準の高度化とデジタル化の波が、経理組織の進化を牽引してきた。中でも、2023年頃からの生成AIのインパクトは非常に大きい。人間の手作業=読解・判断・手入力による「構造化」が会計システム投入へのボトルネックだったが、その解消にAIは寄与する。
しかし、サポート、セールス、開発などの部門に比べ、経理部門でのAI活用開始は遅かった。文化的な抵抗感/アイデア不足/情報漏洩への懸念/情報の捏造/ツールの氾濫、などが「壁」となった。
経理部門進化のための「土台」作りとして、まずAI活用を「宣言」した。組織文化(行動指針)へ明記し、経理本部Gemini利用度ランキング(全社順位)も作成した結果、活用者は増加し、業務効率化・高度化が実現しつつある。
「安全な環境」も整えた。企業経理におけるAIツール選定の鍵は、セキュリティ最優先/社内ツールとの相性/性能差はすぐに埋まる、である。これ一つを使い倒す!と決め、プロンプト共有=アイデア共有で組織として進化させたい。
AIによる決算開示のチェックで、効率化と高度化が実現する。時間短縮、品質向上、分析に集中することが可能になり、経営者への伝達も速くなるのである。※画像デモンストレーションあり

収益認識のレポート・プロセスは、(1)入力(契約書、知識ベースなど)⇒(2)実行タスク(契約・履行義務の識別、取引価格の算定、取引価格の配分、収益の認識)⇒成果物(契約分析レポート)である。
例えば連結・持分法判定のAI自動化においては、複雑な事実関係と会計基準をAIが照合し、判定ロジックを即座に提示してくれる。基準調査とあてはめ時間を劇的に短縮し、人間が見落としがちな条文やリスクを網羅的に指摘もしてくれる。AIは監査「増減分析」の自動化にも寄与する。科目別、取引先別、部門別、事業資料を入力しAIアナリストが自動実行することで、分析コメント(たたき台)を自動生成する。
先述のように、生成AIの得意技は非構造データの構造化、つまりバラバラな情報の整理整頓の自動化、だ。Word、Excel、PDF、mailなどを理解・整理・変換し、システム連携可能な整った状態にする。
個人の道具から組織の資産とするために、プロンプトを共有し組織で活用することは重要だ。当社の経理本部ではGemini Gemを共有している。AI Chatbotで質問対応を劇的に効率化することもできる。また、生成AIがメールの面倒を解決する。要約により読むのが楽になり、自動作成により書くのが楽になる。
◎マネーフォワードに組み込まれる生成AI
当社の「マネーフォワード」もAI機能を続々とリリース。年内にはAIエージェントなどのサービス、その他新機能のリリースも予定している。契約や会計など、マネーフォワードクラウド製品とデータ連携することで、契約情報をもとに仕訳や注記情報を連携できる。
例えば新リース会計基準対応では、契約書取り込み⇒リース契約の自動識別⇒リース区分の自動判定⇒償却計算・利息計算⇒使用権資産・リース負債の計上⇒新リース会計基準を適用した会計処理、が実現する。

非構造化データも含めデジタルへ変換し、環境の普及/知恵の共有/データの獲得を行えば圧倒的な競争優位が実現する。組織の生産性=環境×知恵×データ×人間のレビュー(安全性)、である。私の近著、『経理×AI入門』(中央経済社)も参考にされたい。
■特別講演(1)
味の素グループの財務戦略
~ASV経営をけん引する、価値創造パートナーとしての財務・経理部門の責務~

味の素株式会社
執行役常務 財務・IR担当
水谷 英一氏
1988年味の素(株)入社、資金・財務および法人管理業務を経て、95年より米国勤務。企業提携業務の後に、2010年よりブラジル勤務、決算および税務業務を経て、19年グローバル財務部長。23年に執行役常務 財務・IR担当。
弊社グループの構造を踏まえた、財務部門のありたい姿は以下。
FP&A(Financial Planning and Analysis)人材を計画的、継続的に輩出し、適所適材で配置し事業部組織とネットワーク構築すると共に、財務組織でも全社視点を持ち高品質サービス提供、外部や他部門とのつながり、人材育成、DX推進を担い、企業価値向上に寄与すること。
また、創業以来一貫した、事業を通じて社会価値と経済価値を競争する取り組みを、ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)として提唱している。
弊社の2030ロードマップとFP&Aの役割について。精緻な数値を作り込みすぎる中計策定を廃止。挑戦的な「ASV指標」を掲げ、ASVを追求し実行力を上げる「中期ASV経営」へと進化させる。ASV指標のために必要な「マネジメント変革」を、スピード感を持って実行していく。
不確実な要素はあるが、グループが一丸となってわくわくして達成に向けて挑戦する指標がASV指標だ。ASVが飛躍的・継続的に向上し、ステークホルダー・社会にとって魅力的な企業であり続けることを目指す。なお、将来については、事業セグメントごとのROIC/WACCなども含め“率”で計画をたてている。

成長投資と株主還元について。新記録となる営業キャッシュフローを創出し、将来への必要な投資を行いながら、それらに継ぐWACCを上回る投資として積極的に自己株式取得を実行していく。
組織構成について。2022年頃からFP&Aチームを立ち上げた。チームの事業部責任者は、所属事業で分析・報告を行いつつ、コーポレート部門への業績報告や経営方針の議論に参加することで、事業と経営をつなぐ存在となった。事業部間の情報交換が活発化し、好事例・分析手法の横展開が始まった。
事業の状況に応じた意思決定の切り口、戦略的思考プロセスモデル(事業再生または再編)も示して、事業ポートフォリオ・マネジメントを実行している。ポートフォリオ改革は前倒しで進めることを意識。ヘルスケアやICTなどの成長を加速させると共に、当社の競争優位性構築が将来にわたって見込めない事業は、撤退を進める。事業ポートフォリオ・マネジメントによりキャッシュフローを改善し、EBITDAマージンを改善している。
価値創造プロセスにおける経営会議では、Valuation・企業価値向上の取り組みの意義と示唆も議題にし、審議もしている。グローバルプレイヤーは自社Valuationを継続的に実施している。具体的には、市場の評価が割安ならコストを抑えた株主還元策の実施検討、事業ごとの企業価値創造への貢献のあり方の分析などだ。欧米の著名な会社の元CFOたちのインタビューも行っている。
最適資本構成については、財務規律を踏まえながらの企業価値最大化の水準を年次で確認。また、ネット有利子負債/EBITDAは、グローバルカンパニーと比較し、何年で有利子負債を回収ができるか確認しつつ将来の成長投資に備えている。タックスポリシーの策定、国別納税データの開示も行っている。
2024年からはグループのCFOが集まる(現在は15社)Global Group CFO Discussion Forumを実施。目的はCFO間でのベスト/ベタープラクティスの共有による組織の筋肉質化、グループ会社のメンバーからの将来のファイナンスヘッド候補の選出、そしてそれらを通じたグローバルにおける事業支援の進化・ロードマップ達成に向けた取り組みの加速である。
デジタルトランスフォーメーションやAIの導入も進め、グループ共通のポリシーとプロシージャー&ガイドラインの整備も行っている。経営に関する考え方の言語化の重要性はよく認識している。M&A&D=合併(Merger)、買収(Acquisition)、事業分離(Divestiture)は会社の戦略を実現する重要な手段であり、ファイナンスそのものと認識している。
最後に経営会議メンバーの行動指針を。経営会議は“執行の最終責任”を負い、経営会議メンバーは経営のプロフェッショナルでなければならない。そして味の素グループの目指す「志」、ASVを第一義として、全てのステークホルダーの“幸せの翼”を実現する経営戦略や価値創造ストーリーを、経営会議メンバー全員がOne Teamとなって描き、実現することが必要となる。
■課題解決講演(2)
経営を加速させる「理想の経理組織」への変革
~月次決算を3営業日短縮したTOKIUMの事例とAI活用~

株式会社TOKIUM
経営企画部部長
佐伯 聖一氏
「経理の本来の目的」は、数字を正しく処理することはもちろんだが、経営企画や取締役とシームレスに協力し、経営損益・財政状況をいち早く報告し意思決定を支えることだ。多くの経理部が抱える課題として、提出遅延がある。取引先や社内の他部署など、経理部起因ではない課題も多い。
業務の属人化、手入力と二重管理の課題もある。手入力や複数システムでの二重管理は、工数増加につながる。そして、現場からのネガティブな声。現場からの協力が得られないと、思うように進まない。
弊社は、(1)取引先への地道な協力要請を行い、次の工程を停滞させない仕組みを構築した。(2)社内の申請、承認ルールの明確化も行った。時間単位でルールを明確にし、各部長陣と合意した。(3)社内周知の徹底と(4)業務の棚卸と役割の再配分も行い、他の人の業務を停滞させない仕組みを構築した。その結果、以前は8営業日かかっていた月次決算が5営業日で締められるようになった。
3日間短縮以外に得られた3つの効果を紹介する。(1)請求書遅延を6割解消。これは送付催促業務がなくなるだけでなく、経理部の心理的負担を削減した。(2)迅速な事業戦略の検討や意思決定が可能に。部署を超えてシームレスに協力し合うことは、経営陣の意思決定を支える。(3)現場のマインドセット。経理部全体が「守り」から「攻め」のマインドに変化し、今後も変化に対してポジティブに動き出すことが可能な組織になった。
まとめると、
・単にシステムを入れるだけで月次決算早期化ができるわけではなく、地道で泥臭い改革意識が必要
・社内外問わず、関わる人すべての協力が必要
◎さらなる月次決算早期化のために
申請/承認/照合/入力。これらは泥臭く根性で早期化しようとするとヒューマンエラーが発生し、ガバナンス低下につながる可能性がある。AIが代行できる作業と、人間にしかできない作業を分けたい。
AIが代行できる作業は、単純でマニュアル通りに作業可能なものや、頻繁に発生する同じ内容の反復作業だ。一方人間にしかできないのは、意思決定/余日ギャップの分析/複雑で作業の度に思考が必要なもの/他部署とのコミュニケーション・調整・連携。AIに作業を代行させて生まれた時間で、人間(経理)は経営に提言ができる。
AIを活用するためには「情報の一元管理」が必要だ。関連書類も含めて、情報の一元管理が可能なシステムを選定することが、数年後の「経営スピード」を決定づける。経理業務の自動運転を支援するのが「TOKIUM」。業務における“ノンコア作業”を効率化するのではなく、まるごとなくして“時を生む”ためTOKIUMはSaaS、BPO、派遣と、AIエージェントの連携により、経理作業を自動化、代行する。

TOKIUMの強みはワンプラットフォームであること。購買から支払い、事前申請から経費精算といった、起点から終点までをひとつで完結する。また、経理業務全般に対応した経理AIエージェントを幅広く提供している(AI出張手配、AI経費承認、AI請求照合、AI請求書収集など)。
本日のまとめは以下。
・月次決算早期化は「手段」であり、「目的」ではない
・月次決算早期化に必要なのは、「人の力」による泥臭い改革と、「テクノロジー」による加速。
TOKIUMは皆様の経理業務の自動運転を支援する。
■クロージング・キーノート
経理財務部門の進化と真価
~事業と財務を結ぶ企業価値創造のための脱予算的経営~

早稲田大学 大学院会計研究科
商学学術院 教授
清水 孝氏
1982年早稲田大学卒業。91年早稲田大学大学院商学研究科博士課程単位取得。朝日大学経営学部専任講師・助教授を経て95年早稲田大学商学部専任講師。同助教授、教授を経て2005年より現職。大学院会計研究科長。2016年~24年めぶきフィナンシャル・グループ外部取締役(監査等委員)。2021年~24年会計大学院協会理事長。論文・著書多数。
「管理会計とは人を正しく動かす学問である」(日本化薬元社長 中村輝夫氏)。企業における管理会計の役割を象徴する言葉の一つだと考えている。成果・人事・行動・文化のマネジメント・コントロール。これは戦略を成功裏に実行するためのコントロールシステムであり、従業員の行動を求める方向に向かうよう影響を与えるためのシステムだ。
予算管理においては多々問題が発生する。企業価値向上に結びつく目標値の設定が難しい/年間の予算目標を達成したら手を抜く/環境変化が激しく、年度の早い段階で予算が陳腐化/中央集権的な意思決定を導いてしまう、などが挙げられる。
特に、予算目標についてはトップダウンになる傾向が研究調査から見て取れるが、(1)本社が事業に関する知識を十分に持ち、予測を行い打ち手を考えられるなら、トップダウンでも良いかもしれない。(2)トップダウンを止めて事業に権限を委譲して変化に対応する組織を作りだす(脱予算経営)。本社は事業部の支援に回る。このような解決策が考えられる。
予算を廃止して発展している企業からの見地は「変化に即時に対応できる組織を作るために、従業員に権限を委譲し(モチベーションを高めてベストの状況を目指し)、正しいアクションを考えさせるようにする意識改革の理論(人的資本の最大活用)」。予算や財務目標がないわけではなく、廃止されたのはトップダウンで降りてくる予算や目標だ。事業部などは自らが策定した目標を必ず持っている。
例えば欧州が拠点の銀行、ハンデルスバンケン。同社は1970年代に予算を廃止し、戦略目標はライバル他行と比較した相対的な業績を継続的に改善すること、とした。固定目標から相対目標に変えたのだ。
具体的には、企業全体ではROEで同業他行に勝つ/地域本部はROEと経費率で競争する/支店は経費率と行員一人あたり利益で競争する、こととした。計画値と実績値は全員に開示する。ただし、競ってはいても個人の報酬には結びついておらず、銀行全体の利益を重視する仕組みとしている。

ガバナンスの体制は、本社が地域本部を支え、地域本部は支店を支え、そして支店マネジャーは顧客をサポートする逆ピラミッド型。価値規範が明確になっている。競争をしながら自らを高めていくこと、ただし、成功は支店や地域本部の成功ではなくハンデルスバンケン全体の成功であること、支店長は経営者であること、などがブックレットに明記されている。
報酬については、ボーナスはなし。プロフィットシェアリングによる持ち株制度に、目標に対する超過利益分が回される(株主配当の1/4)。退職時または60歳の時に現状150万ユーロ(全従業員同額)が支払われる。
資源配分について。地域本部や支店は達成すべきKPIを理解しているので、必要な経営資源も明らかになる。他方で、本社サービスのコストを下げるために本社サービスの社内取引市場を作り、外部のサプライヤーと価格競争を行わせる。ローリング予測(RF)によって常に目標は変化し、それに伴って資源配分も変わる。
脱予算経営の12の原則については、下記スライドにまとめた。日本において脱予算経営的なマネジメントを行っているのは、京セラ、DISCO、ミスミグループ本社、広島銀行、足利銀行、八十二長野銀行などだ。

脱予算経営にあたっての財務・経理の役割は以下。戦略を理解する/パーパスやフィロソフィーに基づく行動を行うように導く/KPIを分解してKPI達成のためのドライバーが何か(戦略実行の仮説)を議論する/相対的業績の予測を行い(RF)、目標値が正しいかどうかを検討するとともに資源配分が適切であるかどうか考える/同時に戦略実行の仮説がうまく回っているか、あるいは仮説自体の書き換えを行うかを議論する。
アカウンタントが行うべきこと。銀行の法人貸出金収支を例にとれば、マーケットの成長率を上回る貸し出し残高増の目標を考える。その際には継続的にRFによる目標数値や仮説の更新を行い、それを達成するための成功要因と具体的行動の戦略実行仮説を立てなければならない。
パーパスや経営理念はトップダウンで組織に浸透させるが、事業の詳細は事業部で決定しなければならない。戦略目標⇒アクションプラン⇒尺度⇒目標値、であるが、尺度と目標値を先に考えてはいけない。経理財務は、アクションプラン作成の部分にコミットしたい。
まとめ。脱予算経営において経理・財務は、Value Creatorにならなければならない。戦略の理解/財務目標をKPIに因数分解/KPIドライバーの認識/事業仮説の継続的な検討/支援者としての役割、を果たしたい。
2026年1月29日(木) 会場対面・オンラインLIVE配信でのハイブリッド開催
source : 文藝春秋 メディア事業局

