作者も翻訳者も12人
舞台は、アメリカのとある古いアパートだ。主人公は、さまざまなルーツを持つ12人の子どもたち。
最初の主人公ライラのルーツはトリニダード・トバゴ。引っ越してきたばかりのライラは、私が小学生のころに転校したときと同じように戸惑いながらも周囲を見つめていて親しみを覚える。次の章の主人公はロシア系ユダヤ人のレニー。少なからずロシア系ユダヤ人とつきあいのある人生を送ってきた私は、ドキドキしながら読み進める。
と、そんな調子で、インド・ベンガル地方、中国、キューバ、中東、メキシコ、ジャマイカ、日本、ベトナム、フィリピン、韓国のルーツを持つ子どもたちの夏休みが描かれるわけだが、実はこの本、「主人公が12人いる」だけではない。作者も12人いて、翻訳者も12人いる。例えばキューバ移民の子の章は実際にキューバ移民の作家が書いていて、ほかの章もそれぞれのルーツに関連する作家が担当している。

思わず頭が混乱する。ひとつひとつの話は確かに独立しているけれど、彼らはちゃんとお互いを認識しているし、ほかの子のエピソードも生きている。2人や3人の共作ならともかく、12人の作家がいったいどうやってこんなことを?
だけど読み進めるごとに、だからこその味わいがわかる。つまり、それぞれの子どもたちが異なる感覚や悩みを持ちながらも互いに共通点を探る姿に、作家たち自身の抱えてきた個人史を感じるのだ。
移民2世3世の子も多く、彼らにとっては英語のほうがなじみがあり、ルーツの言葉や料理について教えてくれるのは大抵祖父母だ。
自転車に乗れないベンガル移民の女の子トゥンパを自転車に乗せるパワフルなおばあちゃんは、「それいけ!」とはげましながら、インド独立運動のころの話をする。「あのころは、女だけで出歩くなんて、はしたない、目立ちすぎると言われたもんだ」。「だからこそ、あたしの母さんやおばさんたちは、絶対に自転車に乗ってやると決めたのさ」と。
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