ギースリ・パウルソン著 上田一生+沼田美穂子訳「オオウミガラス 種の絶滅をめぐる物語」

片山 杜秀 慶應義塾大学教授

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オオウミガラスはどこへ?

 リチャード・アークライト。産業革命期の大立者。1768年に水力紡績機を発明して巨万の富を築いた。その孫がジョン・ウォリー。博物学者で鳥の卵のコレクター。1858年、やはり鳥類が得意の動物学者、アルフレッド・ニュートンと共にアイスランドへ行った。ニュートンも金持ち。実家は西インド諸島にサトウキビ農園を保有していた。そういう家系から大英帝国黄金時代に世界を旅する博物学者は出たものだ。

 2人の目的は? むろん鳥。オオウミガラスである。飛べない。海に潜って魚を獲る。ペンギンみたいだ。しかし種類としてはペンギンから遠い。カラスの仲間でもない。チドリの系統。広く北大西洋の島々の岩場で営巣していた。ところが減っていった。人間のせいだ。たとえば、フランスの探検家でカナダの命名者でもあるジャック・カルティエは、1534年にニューファンドランドの近くの島での狩りの様子を記録している。無数のオオウミガラス! 警戒心なし。簡単に捕まる。太っている。おいしそう。肉は塩漬に。大航海時代の北大西洋における海員の食糧事情がよく分かる。厚い脂肪は燃料に、羽毛は枕の材料にもされた。大虐殺が繰り返され、18世紀のうちにだいぶん減ってしまった。

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source : 文藝春秋 2026年9月号

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