柏戸剛 「八百長相撲」と言われ2人とも憤慨しました

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出足鋭く一気に押し切る相撲で優勝5回。柏鵬時代を築いた大横綱、柏戸剛(かしわどつよし)(1938―1996)。病気やケガに悩まされたが、四場所休場の後の1963(昭和38)年秋、引退を賭した場所で全勝優勝を果たし、人気は最高潮に達した。宿命のライバルだった大鵬幸喜(たいほうこうき)親方(1940―2013)が2人の関係を語る。

 

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 柏戸さんは、自分の好きな相撲を取り続けることができた。私は、いつも勝つ相撲を取らなければならなかったのです。さらに「大鵬は強すぎる、相撲がおもしろくない。その点柏戸は……」などと言われたこともあって、正直、柏戸さんがうらやましかった。

 柏戸さんは、私より2年先に相撲界に入り、私の入門した時に幕下優勝をとげていた。つねに私より上にいたのです。

 私が初土俵を踏んで間もない頃、友人と2、3人で腹ごしらえに、おにぎり屋さんに入ったことがあります。すると、その店の親父が私に「どこの部屋だ」と聞く。「二所ノ関部屋だ」と答えると、「伊勢ノ海部屋の富樫は、必ず横綱になる」と言い出し、私の友人が「この納谷も横綱になる」と言い返したことがあった。以来、富樫、後の柏戸さんを意識するようになりました。

柏戸剛 ©文藝春秋

 私が十両に上がったときだった。富樫さんが出稽古に来たことがありましてね。今は巡業などは合同でやりますが、当時は一門ごとでしていたんです。ですから、一門以外の者が出稽古にきたということは、いわば道場破りに匹敵する。ふだんの稽古以上に緊張感が走ったものです。私は富樫さんに稽古をつけてもらったのですが、一気に押しやられるだけで、まったくかなわなかった。

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source : 文藝春秋 1998年12月号

genre : エンタメ スポーツ