いつ子供にテレビを見せるかとなればやはり私が料理その他の家事をするため一人で静かにしていてほしいような場合で、リアルタイム録画DVDと日々お世話になっています、とはいえ一体、子供は何歳から完全に1人でテレビを鑑賞できるでしょう。
子供向けに制作編集された番組であっても、幼いうちは「ねえいまのなに?」とか「どういういみ?」とか尋ねてきて、こちらはそのたび料理の手を止め聞き返しあるいは聞き逃し「もうッ、おかあさんッ」と怒られ「ごめんごめん何?」「っていうかおかあさんッ、おなかすいたんじゃけどごはんまだなんッ」子育てはままならぬもの、しかしそういうことは成長とともに減り、今は私の方がテレビを見ている子供にあれこれぶつぶつ言い聞かせたくなるときがあります。「お母さんに頼まんでお祖父さん自分でお茶淹れたらええのにね」「生き物にざんねんもざんねんじゃないもないじゃろ」私が子供のころよりおそらく遥かに深く考えて作られ年々アップデートされてもいる(少し前のDVDを借りて見たりするとよくわかります)だろう子供番組でもそれでも時折、家父長制、ジェンダー差別、冷笑、ルッキズム、集団内での滅私礼賛、踊るそれらの幻影があたかも理想的常識のような顔で子供の前に現れる、私も幼いころからいろいろな価値観を内面化して生きてきました。中には正しくない、私自身に害をなす、それなのにそう簡単に引っぺがせないようなものもあった、冗談じゃないと思います。「なんでこの人だけ28歳独身独身言われるんかね。何歳でも独身でもええじゃなぁ」「笑顔はそりゃ宝石かもしれんけど宝石をいつも飾っとく必要はないんよ」「言わぬが花なんて嘘じゃけえね」子供はうるさそうなときも聞いていなさそうなときもふんふん頷くこともあり私より先に「ええのにねえ、おとこのひとがピンクのひらひらきててもすてきよねえ」などと言うこともあります。
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source : 文藝春秋 2020年3月号