ブレイキンと日本語

巻頭随筆

エンタメ スポーツ

 昨年12月、ブレイキンが2024年パリ五輪の追加種目に決定しました。

 ブレイキンと言われてピンとくる人はほとんどいないかもしれません。身体のあらゆるところを使い、回ったり跳ねたりとアクロバティックな動きで魅せるブレイクダンスのことです。

 ダンサーのことを、男女それぞれBboy、Bgirlと呼びますが、僕は、今もBgirlとして活躍する姉・Ayaneの影響で7歳からブレイキンを始めました。当時、先輩がつけてくれたダンサーネームはShigekix(シゲキツクス)。11年間、ずっとこの名前で活動しています。

 昨年の春まで大阪の高校に通っていましたが、卒業後、強豪チームがひしめく、ブレイキンの聖地である神奈川県川崎に拠点を移し、今では練習漬けの日々を送っています。

 ブレイキンが五輪の種目に決定する10日ほど前、ザルツブルクで開かれた世界大会で優勝しました。大会はバトル形式で、ダンサーが一対一で音楽に乗せ即興の動きと技を披露し、どちらがより多くジャッジからの票を集められるかを競います。ダンスが点数化されて競技になるのかと思うかもしれませんが、技術や音楽性、創造性、個性などさまざまな項目が総合的に見られ、採点されます。

 決勝戦では、ロシアのダンサーと優勝の座を争いました。ステージ上の僕らに向かって、5人のジャッジが一人ずつ、より優れたパフォーマンスを見せたと思うダンサーの名前の札を上げていく緊迫の時間。4人目のジャッジが「SHIGEKIX(シゲキツクス)」と書かれた青い札を上げ、優勝が決まった瞬間、一段下りたところから見守っていた姉がものすごい勢いで飛びついてきました。力強いハグを交わし、僕は長らく目標にしていたこの結果を噛み締めました。

 7歳でブレイキンの道に飛び込んでから、小学5、6年生の頃には海外の大会に出るため遠征をするようになり、中学校入学以降はどこの国へでも1人で行くようになりました。

 海外に行くと、「日本人はなぜブレイキンに強いのか」と聞かれます。実は、世界大会での上位入賞者には日本人が多く名を連ねているのです。

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source : 文藝春秋 2021年2月号

genre : エンタメ スポーツ