街がまるごと美術館に

巻頭随筆

福島 治 グラフィックデザイナー・東京工芸大学芸術学部教授
エンタメ 社会 アート

 2020年晩秋。コロナ禍の江東区で「アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」が初めて開催されました。

 芸術祭の中心は全国から公募した障がいのあるアーティストによる作品、300点の屋外展示です。9日間、街がまるごと美術館になるというあまり前例のない試みです。

 私は10年にわたって障がいのあるアーティストの支援活動を行ってきました。欧米では主に正規の美術教育を受けていない人々のアートを「アール・ブリュット」「アウトサイダー・アート」と呼びます。数年前から2020年に予定されていた東京パラリンピックをきっかけに日本でもこうしたアートの魅力を発信していきたいと思っていました。欧米では大勢のファンがいてマーケットも確立していますが、日本で開催される障がいのあるアーティストの展覧会はほとんどで閑古鳥が鳴いているからです。

 作品の素晴らしさには自信があります。問題は知ってもらうきっかけがないこと。美術館に足を運んでくれるのはごく一部の人なのです。

 そこで、発想を変えて多くの人が集まる「街」に展示すれば、偶然の出会いを生み出し、多くの人にアートの素晴らしさを伝えられるのではと思い至りました。ただ、それにはスポンサー、行政の協力が欠かせません。私は突破口をみつけられずにいました。

 しかし、2年ほど前、衆議院議員の柿沢未途さんとの出会いが実現への扉を開きました。深川で育った柿沢さんが地元の人と一緒に芸術祭をやりましょうと提案してくれたのです。私も15年ほど前から深川に自宅と事務所を構えています。二人が発起人となり、“資金ゼロ”から行動を開始すると、続々と仲間が集まりました。

 ところが、地元の神社仏閣、商店街も巻き込み、いよいよ本格的に動き始めた矢先にコロナによる緊急事態宣言が発令されました。実行委員会のメンバーからは中止や延期などの声もあがりました。しかし、ここで私の夢だった「屋外展示」が大きな意味をもつことになったのです。

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source : 文藝春秋 2021年2月号

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