【猪瀬直樹 特別寄稿】新型コロナウイルス「一斉休校」 不透明かつ空疎な意思決定

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新型コロナウイルス騒動にみる最高意思決定は「連絡会議」と「御前会議」の使い分けにより、きわめて不透明かつ空疎な内容で構成されていた。日本国の統治機構の問題点はどこにあるのか。昭和16年の日米開戦に至るプロセスを紐解くことで見えてくるものとは?
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「対策本部会議」の時間は?

 新型コロナウイルスの脅威はこれからさらに増すだろう。政府も国民も一体になって事態を切り抜けなくてはならない。文字通りの国難である。そのためには意思決定の透明性は不可欠である。そこで今後のためにも振り返っておきたい。

 小中高校の一斉休校を決めるまでの意思決定過程が不透明で根拠が明らかでなかった。安倍首相をトップに「新型コロナウイルス感染症対策本部」は閣僚と補佐官30人がテーブルに就いた。1 月30日から2 月27日まで15回開かれた。討議の時間はない。担当大臣の発言が公表されているが、厚労大臣が5 分、他の大臣が1人かせいぜい2人で2分か3分、首相が3分ぐらいの割り振りで読み上げられているだけだ。それだけで15分が過ぎてしまう。

 対策本部会議の時間を一覧表にする。

①1月30日・10分 
②31日・15分 
③同日・15分 
④2月1 日・15分 
⑤5日・13分 
⑥6日・11分 
⑦12日・13分 
⑧13日・18分 
⑨14日・8分 
⑩16日・11分 
⑪18日・11分 
⑫23日・17分 
⑬25日・19分 
⑭26日・13分 
⑮27日・10分

 一斉休校を決めた27日の会合は10分間だった。対策本部会議はただの発表の場にすぎなかったのだ。「首相動静」をチェックすると一斉休校を決めた10分間の対策本部会合の直前17時23分から54分までの31分間、官僚たちが執務室に呼ばれている。

 政治家は加藤厚労大臣と菅義偉官房長官、西村官房副長官、岡田官房副長官の4人、その他は役人の官房副長官、首相補佐官、内閣危機管理監、国家安全保障局長、主要省庁事務次官など16人。裏の意思決定機関である。対策本部はお飾り、「御前会議」であったことがわかる。

 対策本部会合で安倍首相が休校を打ち出す前に、菅官房長官ら20人が官邸で「連絡会議」の時間を設けていたのだ。

 戦前の国家意思決定でも、政府と大本営(軍部)の「連絡会議」であらかじめ結論をつくり、天皇臨席の「御前会議」で国家意思を決定した。つまり「御前会議」とは、儀式としての会議であり、僕はあえて一斉休校という重大決定をした「対策本部会合」を「御前会議」と揶揄してその言葉を使っているのだ。

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