「コロナ鬱」にならない外出自粛生活術

コロナに負けない心と身体を作る

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家で過ごす時間の増えた私たちが懸念すべきは〝鬱〟である。意図的にコロナに関する情報から完全に切り離された時間を作ることがポイントだ
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岩波氏

憂鬱感は鬱病の前段階

「今日会ったあの人は、もしかしたらコロナに感染していたかもしれない」「万が一、自分も感染していたらどうしよう……」

 世界中で死者が日に日に増え、日本でも感染爆発、医療崩壊といった不穏なニュースが流れています。これはわれわれが今まで経験したことのない事態です。目に見えないからこそ、コロナウイルスへの不安や恐怖は大きなものになりがちです。

 感染することに対して不安を持つこと、また、コロナウイルスによって大きく変わった環境にストレスを感じることは自然な感情です。最近では“コロナ鬱”という言葉も耳にするようになりました。

「自分が感染して死んでしまうのではないか」と、四六時中そのことで頭がいっぱいになってしまったり、経済的なダメージや人と会えない孤立感から強い憂鬱感を覚える人もいると思います。“コロナ鬱”というのは、本格的な鬱病まではいかないにしても、暗く重苦しい気持ちになる、いわゆる“鬱状態”に陥ることだと言えそうです。

 鬱状態は鬱病の前段階です。何事に対してもやる気が出ず、食欲不振や睡眠障害を伴うこともあります。深夜に目が覚めてしまう、いつもどこか体調がよくないことなども鬱状態のサインだと考えられています。

 鬱状態自体は一過性であることが多く、気持ちが落ち込むからといってすぐに鬱病と診断されるわけではありません。こうした状態が長く続いてはじめて、鬱病と診断されるのです。

 憂鬱感というのは人間の自然な感情であり、日常生活の中で、そのような感情を抱くことは珍しくありません。一般的には、仕事熱心で真面目、適度に手を抜くことができないタイプ、一見、温和で朗らかだけど落ち込んだり高揚したり気分の変動があるタイプの人が鬱病になりやすいとされています。

 ただ、鬱病は内面的な原因だけではなく、環境面、外的な要因によっても発症します。災害や今回のコロナのような疫病など、自分でコントロールできないことが原因となることもあるのです。コロナに伴う大きな変化によってダメージを受けて鬱状態になり、それが長期化することで鬱病になってしまうということも十分に考えられます。

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緊急事態宣言で街は一変

 わたしの患者さんに、毎年3月になると「東日本大震災から何年」というニュースを見て、当時の津波の様子がフラッシュバックしてしまうという方がいます。こうしたPTSD的な反応を示す人、さらにPTSDから鬱状態になる人、症状の進み方はさまざまですが、自分をとりまく状況が大きく変化することで精神的に影響を受けるのは、珍しいことではありません。

 さらに、漠然とした病や死への恐怖など、平時には日常に追われ忘れている不安感がコロナをきっかけに顕在化するということも起きています。

 では、コロナウイルスとの闘いという、これまで経験したことのない状況で、誰もが持ちうる憂鬱感を鬱病へと高じさせないためにはどうすればいいのでしょうか。

「日常」と「弛緩」を大切に

 何よりも大切なのは、これまで通りの、「当たり前」の日常生活を続けるように努めることです。

 在宅勤務になり、会社に行かなくなるだけで生活リズムは乱れます。なにも1日のスケジュールをしっかりと立てて厳密に行動する必要はありません。起床時間、就寝時間を今までとなるべく変えないだけでも十分です。昼間しっかり起きて、夜早い時間にしっかり寝る。そういう生活リズムを保つようにしましょう。

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リモートワークを推奨されるが…

 一番大事なのは睡眠です。12時前には布団に入り、深く眠るようにしましょう。12時を過ぎて寝ると、どうしても浅い睡眠になりがちです。睡眠が足りていないと鬱状態になりやすいですし、集中力や注意力の低下を招きます。

 食事も三食とることが望ましい。ただ、外に出られない時間が増え、あまりお腹が空かないこともあるかと思います。そのような時は、ビスケットをつまんだり、パンを半分だけ食べたりして、何かを口に入れることで、食事のリズムを崩さないようにすることが大切です。

 また、これまで通りの生活を維持するのと同じくらい重要なのが、精神的に“弛緩”すること。つまり、過剰な不安による緊張状態が続かないようリラックスすることです。

 たとえば情報への向き合い方。先の見通せない不安や自分自身が感染しているのではないかという恐怖から、インターネットのリンクを次々クリックして、結局夜通し見てしまった、なんていうこともあるでしょう。ネット上に溢れる根拠のない情報に踊らされてしまう人も多いのではないでしょうか。

 四方八方から情報が入ってくる現代社会において、人はどうしても過度に不安を煽られ、一部のメディアはそれを助長します。情報の中には事実に基づかない憶測も多く、それらを追っていくと不安が増幅し、アリジゴクのような深みにはまってしまいます。これでは弛緩するどころか、緊張感が増すばかりです。

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source : 文藝春秋 2020年6月号

genre : ライフ 医療 ヘルス