第68回菊池寛賞の選考顧問会は10月6日午後5時から、阿川佐和子、池上彰、保阪正康、養老孟司の四顧問を迎え、東京・築地の新喜楽で開かれました。慎重な討議の結果、下記の通り授賞が決定いたしました。アンケートをお寄せくださいました各界の方々、並びにご協力いただきました各位に厚く御礼申し上げます。
公益財団法人日本文学振興会
東京都千代田区紀尾井町3-23 文藝春秋内
賞・各受賞者に正賞・置時計及び副賞・100万円
▼林真理子
40年ちかい文筆生活のあいだ、現代社会に鋭く切り込む小説から歴史、古典を題材にした作品まで多岐にわたる創作、昭和より続く「週刊文春」連載エッセイなど、常に最前線で活躍を続ける
▼佐藤優
『国家の罠』で2005年にデビュー以来、神学に裏打ちされた深い知性をもって、専門の外交問題のみならず、政治・文学・歴史・神学の幅広い分野で執筆活動を展開。教養とインテリジェンスの重要性を定着させる
▼滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
今年3月、コロナ感染が拡大するなか、オペラ「神々の黄昏」の無観客上演をいち早く決断。ユーチューブでの配信は海外からを含めて41万人が視聴し、コロナ時代の文化イベントのありかたに一石を投じた
▼秋田魁新報 イージス・アショア取材班
2017年の配備計画浮上後、地元紙として計画の妥当性を調査・検証。防衛を専門とする記者がいないなか、地道かつ多角的な取材で現地調査のずさんな内容を暴く。本年、同計画は断念に追い込まれた
▼篠山紀信
半世紀にわたりスターから市井の人まで、昭和・平成・令和の時代を第一線で撮影。その業績は、2012年より7年間全国を巡回し、のべ100万人を動員した個展「写真力 THE PEOPLE by KISHIN」に結実する
菊池寛賞受賞を喜ぶ
夢の物語の、まだ続き 辻村深月(作家)
林さんと同じ山梨県出身の私にとって、幼い頃から「林真理子」の名前は特別なものだった。周りの大人たちが同郷のスターとしてその名を語る時、枕詞に「作家」はまずつかない。活躍の幅が多岐にわたればこそと思いつつ、高校生の私にはそれが歯がゆかった。作家としての林真理子の話がしたかったのだ。
地方に生きる多くの“わたしたち”の青春を描いた『葡萄が目にしみる』、古典や歴史の中の登場人物だと思っていた人々にも自分たちと同じ生きた思いが通うことを教えてくれた『ミカドの淑女』や『西郷(せご)どん!』、『下流の宴』で社会の格差を、『我らがパラダイス』で介護を、圧倒的な筆力で小説に昇華すること。少し例を挙げるだけでも、時代時代に林さんが描いてきた小説は、何に題材を求めたかまで含めて、それ自体が1本の物語のようだ。
先日お会いした、山梨県立文学館での「まるごと林真理子展」の対談の中で、「夢はまだ続く」と仰っていた林さん。このお祝いの言葉を書いている最中にも、『週刊文春』でのエッセイの連載回数がギネス世界記録に正式認定されたというニュースが飛び込んできた。まさに、今この瞬間も最前線で“今”を駆け抜けているのだと思う。
菊池寛賞、ご受賞、心よりおめでとうございます! 作家・林真理子が紡ぐ物語の続きを、同時代に生きる後輩として、これからも楽しみにしております。
天の目と地の目 片山杜秀(慶応義塾大学法学部教授)
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source : 文藝春秋 2020年12月号
genre : ニュース