産業革新投資機構「経産省は腰砕けだった」

大西 康之 ジャーナリスト
ビジネス 企業

社外取締役が見た官民ファンドの崩壊

冨山和彦氏 ©文藝春秋

 昨年12月10日、産業革新投資機構(以下、投資機構)の田中正明社長(当時)が記者会見を開き、民間出身の9人の取締役全員が辞任することを明らかにした。
 騒動の発端は、最大で1億2000万円を超える代表取締役の報酬問題だ。所管官庁である経済産業省は当初、高額報酬を約束していたが、突如それを「白紙撤回」。両者の対立は、投資機構が運営するファンドのガバナンス問題にまで波及し、それに反発した経営陣が辞任することとなった。

 ――冨山さんは社外取締役の1人でした。投資機構は、JT株やNTT株の売却益を元に作られた国内最大の官民ファンドで、2兆円を超える資金を運用できるということで注目を集めました。正式に発足したのは昨年9月の終わりです。立ち上げ早々辞任してしまったことに後悔はありませんか。

 冨山 我々が辞任したことは、国家・国民に対する誠実さを示したものだと思っています。できないことは安請け合いできませんし、無理にやったとしても、長い目で見れば、損失を被るのは国民の資産です。

 発足当初は、経産省との連携もスムーズで、グローバルなベンチャー企業を育てようという理念も共有できていたと思います。

「話が違う」と思い始めたのは、11月3日でした。この日の朝日新聞に投資機構の代表取締役4人の報酬が「1億円超」になるという批判記事が出たのです。

 経産省で何が起きたのかはわかりません。高額報酬について批判されるのを恐れたのかもしれませんが、ただ、その頃から経産省の様子が明らかにおかしくなった。担当者が替わり、それまでの合意が反故にされ、言うことが変わった。腰砕けになってしまったのです。

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source : 文藝春秋 2019年2月号

genre : ビジネス 企業