2020年9月16日にスタートした新政権は、「国民のために働く内閣」を掲げ、デジタル庁の創設、携帯電話料金の値下げなど様々な改革案を打ち出した。現在の国内は、新型コロナウイルス感染拡大の「第3波」に見舞われているが、菅義偉首相(72)はこの難局を乗り越え、改革を実現させることは出来るのか。政界のご意見番であるジャーナリスト・田原総一朗氏が語る。
安倍前首相が「菅さんがいい」と断言
田原氏
実は私は、菅さんが総理大臣になるだろうという予感は、2年前からしていたんですよ。
2018年の秋、安倍晋三前首相が3選を果たしたばかりの頃だったかな。安倍さんと一対一で会っていたら、「田原さん、ポスト安倍は誰がいいと思う?」と聞いてきた。そこで、「菅さんがいい」と断言したんです。理由は3つあります。
1つ目は、世襲の政治家ではないということ。
2つ目は、エリートではないこと。彼は秋田の農家に生まれ、就職で上京、働きながら大学を卒業した苦労人です。苦労人は修羅場を経験していることが多いので、いざという時に強い。また、エリートでない人は得てして、他人をやっかんで足を引っ張ったりしますが、菅さんにはそういう面が全く見られないのも良いところです。
3つ目は、自分の仕事に徹するというところ。菅さんは7年8カ月も、官房長官として安倍さんを立派に支え続けていた。あのポジションを続ければ普通は野心が芽生えます。しかし、菅さんは変な気を起こすことはありませんでした。
安倍さんにこういったことを説明したら、「実は僕も、菅さんがいいと思っている」と打ち明けられた。その時は、安倍さんの気が変わるかもしれないと思って、菅さんに伝えることはしませんでした。
そこから月日が経って、今年4月のことです。当時の永田町では、安倍さんが岸田文雄さんを後継にしたがっているとの説が有力でした。だから安倍さんにこう突っ込んだんです。「最近あなたは気持ちが変わったんじゃないか。僕との約束はどうなったのか」と。そうしたら「気持ちは全く変わっていない」と。その晩、菅さんに電話して初めてそのことを伝えたら、「本当ですか?」と驚いていました。
菅さんの、多くの難題を巧みにさばいてきた手腕は見事なものです。中でも私が記憶に残っているのは、2005年に小泉純一郎さんが掲げた「郵政民営化」を巡る騒動です。
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source : 文藝春秋 2021年1月号