コロナ禍で手に取った本は、人生、生き方について書かれているものが多かった印象があります。
『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』。国によって対応の仕方も千差万別だった第1波。国内状況と比較するため海外の情報を知りたくてネットで調べるうちに、著者のサイトに。ロックダウン下のパリで高校生の息子との生活を綴った日記。緊迫した日々の生活描写と、客観的に日本を見つめる視点が新鮮で、自粛期間中の心の支えになっていました。無心に豚まんの生地を捏ね、蒸したてを息子に食べさせる日もあれば、悪化する一途の世界情勢に落ち込み、ぽろりと弱音を吐いてしまう日も。息子さんのさりげないフォローに、飾らぬ親子の関係性が浮かび上がる。改めて書籍化された本を読んで、あああの時、私も辛いっていうことを言いたかったんだな、と気づきました。
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source : 文藝春秋 2021年1月号