著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、石川直樹さん(写真家)です。
ぼく自身は、地球上のあちこちに出かけているというのに、東京出身の母はつい最近まで飛行機に乗ったことがなかった。本州から出たことがないどころか、長野や福島あたりに家族旅行で出かけたのが、家から離れた最長距離だった。どうしてそんな母親から、こんな放蕩息子が生まれてしまったのか、と本気で思う。
ただ、おそらくぼくは、父よりも母の影響を多分に受けている。自分が幼い頃は盛んに折り紙やぬりえや工作などをしていて、それは母の嗜好によるものだ。だからかどうかはわからないが、自分は小学校の頃から図工や美術の授業が何より好きで、勉強は嫌いだった。折り紙は今でも好きだし、他にもお手玉やあやとりやおはじきなど、女の子が好きであろう遊びに随分と親しんだ記憶がある。
母は高校時代に写真部に所属し、押し入れを暗室にして写真のプリントなどをしていたらしい。母から写真の手ほどきを受けたことは一度もないけれど、自分が写真家を志したのは、単なる偶然とは思えない。
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source : 文藝春秋 2021年5月号