先日、息子の生活指導の先生に会ってきた。息子はフランスの高校1年生。遅刻することが多く、点呼に間に合わないので欠席扱いになったり、先生によっては遅刻者は教室にさえ入れてもらえないため、必然的に欠席となる。届けのない欠席日数が多すぎると、面談の要請があったのだ。
息子の欠席扱いは、とくに昨年の12月に集中していた。私が年末の報道番組に出演するため、1カ月近く単身帰国していた時期だ。年末恒例のこの番組は6時間半に亘る生放送なのだけれど、事前に番組宣伝の収録や打ち合わせがあるため、最低でも放送日の2週間前には日本にいなければならない。今回はコロナ禍で帰国後2週間の自主隔離もあったから、日本滞在は例外的に1カ月にも及んでしまったのだ。
息子のだらしなさは私の責任でもある。先生に欠席の内情は遅刻であることと、12月は私が丸一カ月不在だったことを正直に告げると、驚いたように目を見開くので、思わず口走ってしまった。
「このコロナ禍で、1年ぶりの大事な仕事だったのです。私も働かなければなりません。生きていくために……」
「それはそうよ」
すかさず深くうなずいた後、先生は同席していた私の息子の方に向き直り、
「なぜお母さんが心穏やかに仕事に向き合えるようにしてあげないの?」
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source : 文藝春秋 2021年6月号