孫の世代になって毒性があらわれるかもしれない――国際学術誌 で危険性が指摘された農薬「ラウンドアップ」。その使用に警鐘を鳴らした筆者のレポートに、農薬販売会社から抗議文が届いた。最新研究を無視した勝手な言い分に、食の安全の未来のため、断固反論する!
テレビCMも流れ、ホームセンターで買える「ラウンドアップ」
あらゆる雑草を枯らしてしまう除草剤「ラウンドアップ」。その便利さを受けてか、テレビでもCMが流れているようです。そのうえ、ホームセンターやドラッグストアーに行けば手軽に買えるのだから、誰も危険だなんて思いません。ところが、ここ数年、世界中の研究者の間でさまざまな危険性が指摘されてきました。たとえば、ごく少量でも発達神経毒性や「世代を越えた毒性」があらわれる可能性です。「世代を越えた毒性」なんていってもにわかには理解しがたいですが、親が食べた農薬の毒性が、孫の世代になってあらわれるようなものです。
私たちは農薬の危険性というと中毒のような症状を想定しますが、そういう毒性は意図しない限りまず起こりません。
困るのは何年も経って忘れた頃に発症する毒性です。発症しても原因を特定するのが困難なら自己責任になりかねない。それが嫌なら自己防衛するしかないのですが、そのためにも知っておくべき最先端の研究レポートを紹介したのが『世界に逆行「農薬大国」日本の現実』(「文藝春秋オピニオン2021年の論点」と「文春オンライン」で発表。以下「論点の記事」)です。
そもそも国の安全基準がおかしいのだ
これについて、「ラウンドアップ」除草剤を販売している日産化学から抗議を受けました。抗議箇所は12か所(詳しくは日産化学のHP参照)ですが、その中から私たちの健康に直接関連すると思われる項目を選んで反論したいと思います。
こうしたことが起こるのは、私たちと農薬メーカーで、農薬の安全性に対する考え方が違いすぎるからです。一例を挙げますと、農水省、食品安全委員会など国や農薬メーカーは、「農薬は多種類の毒性試験から設定した基準値を守っているから安全だ」としています。たしかに法律に違反していません。しかし最新の研究データから、私たちはそこに問題があると指摘しているのです。
たとえば、妊娠中にグリホサートを摂取した母ネズミから生まれた子ネズミは、これまで安全とされたごく「少量」でも行動異常(発達神経毒性)が報告されています。だったら、今の基準では安全性は保証されないのではないか、といった指摘です。それなら安全性の基準を見直すべきではないでしょうか。
医薬品は口に入れます。農薬も作物を通して口に入ります。ところが、農薬は医薬品のような臨床試験もなく、農薬メーカーの安全性試験だけで市販されているのです。それなのに、その試験データは非公開が多すぎて検証できません。
上記の研究レポートは、基本的に学術誌に掲載された論文をベースにしたものです。もし農薬メーカーが、自分たちの製品は安全であると主張するのであれば、安全だというそのデータを学術誌に載せて公開すべきでしょう。
「水俣病」の教訓を思い出すべき
農薬の問題は「水俣病」と相通じるものがあります。科学的に証明されないからといって、決着するまで30余年もかかって大勢の被害者を苦しませ、今も被害者の苦しみは続いています。農薬が同じ道を歩まないとは、誰が断言できるでしょうか。
それでは以下に、日産化学とのやり取りを示しつつ、反論を述べていきたいと思います。
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