連絡先は非公開。当然、ホームページもなし。会費は年間2000万円で紹介制……。この謎めいた会社こそが、どんなトラブルでも処理してくれると囁かれる「日本リスクコントロール」だ。この本には、同社を設立した寺尾文孝氏が関わった政治家、官僚、芸能人、暴力団幹部とのエピソードが綴られている。
柔道3段、剣道3段の寺尾氏。もとは精鋭ぞろいの第一機動隊に所属していた警察官だったが、階級社会に違和感を覚え、5年半で退職する。
「警察官は天職だと思うくらい自分には合っていたと思うね。だから私は退職後、同期会に出ても、『俺は本籍・警視庁。いまは出向中』と言っていたんだよ」
その矜持があったからこそ、闇社会に取り込まれることがなかったという。あるとき経済ヤクザから、こんな言葉を聞かされた。
「たいていのサラリーマンは退職金の3倍の金を出せば言うことを聞く」
こんな手口で闇社会は表の世界に入り込んでくるのだ。寺尾氏は「10億ならいつでも届けまっせ」と言われたこともあったという。
「このときは自分で大規模なリゾート開発を進めていたから、その程度の金では揺るがなかったけど、何もなければ、グラッときたかもしれないな。元警視庁というプライドだけじゃあな」
と笑う。このとき相手に散々、説教したエピソードが書かれている。
ほかにも本書には、許永中や伊藤寿永光、森下安道など多くのバブル紳士が登場するが、印象に残る人物を問うと、
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source : 文藝春秋 2021年9月号